いちご100%は少女漫画のような少年漫画

最近になって全19巻を読み終えた『いちご100%』について語ってみる。いちご100%週刊少年ジャンプに掲載されていたれっきとした少年漫画だ。テーマは恋愛で全19巻。平凡な男主人公がモテモテとかちょっとエッチなシーンがあるという点では少年向けなのだが、かわいい女の子がたくさん登場するラブコメなためか女性読者が多い。自分の周りにも読んでいる女子の知りあいが何人もいる。


いちご100%は恋愛中心の話で感情描写が丁寧である。モノローグだけでなく表情や動作からヒロインが何を考えているのかわかるのがすごい。感情の動きがここまで細やかに描写されている少年漫画はあまり見たことがない。特徴や絵柄からみると少女漫画に近い気がする。


いちご100%は主人公の真中と東城綾西野つかさ北大路さつき南戸唯の4人のヒロインたちが繰り広げるラブコメディだと言われている。だが唯と真中の間に恋愛感情はない。唯は西野と同じ高校に進学し再会する時の橋渡し役になったり、レベルの高い女の子たちに想われていながら一人を選べない真中に辛辣なことを言ったり重要な役割を果たしているが、兄妹のような距離感でヒロインという感じはない。


北大路さつきが登場したのは高校に入ってからだが、真中に1番早く告白している。1番積極的に迫っているヒロインで真中も好意を持っているのに、なんとなく最後に結ばれることはなさそうだと思ってしまった。東城と西野はいちごパンツをはいているが、さつきは違う柄だし。他に恋愛に絡んでくるヒロインとしては予備校で出会った梢もいたが、真中からの恋愛感情は全くない上に告白をスルーされてかわいそう。


真中が東城を選ぶのか西野のを選ぶのかは最後まではっきりしなかった。決め手になったのは西野の告白だが、いろいろなタイミングが違っていたら東城と結ばれる未来もあったと思う。


東城について

東城は物語の冒頭に出てくる真中が屋上で目撃したいちごパンツの女の子だ。メガネを外して髪を下ろしたら美少女という設定。高校デビューした東條が急にモテ始めるのはどうかと思った。やはり人は見た目が100%ということか。まあ実際に髪型や服装で人の印象が変わるものだということは認めるが。同一人物だと気づかずブス扱いする周りのモブは見る目がなさすぎる。西野にどうしてそんな格好してるの?といわれメガネとおさげのまま前髪を下ろすだけでかなりかわいい。


東城は眼鏡とお下げの中学時代のほうが自然体で魅力的にみえる。西野にデレる真中にムッとしたりカバンを振り回したり。高校時代になってから何を考えているのかわかりにくい。高校では美少女であることがわかって周りから注目されたことで、素を出せなくなってしまったのでは。受験の時コンタクトで髪を下ろして颯爽と歩く姿はかっこいい。最終話の4年後の姿は大人っぽさが加わっていてヒロインの中で一番きれいだった。


一番印象に残っているのは扉をはさんだ告白シーン。東城は屋上で夢について語り合った中学生の時からずっと真中に好意を持っているような描写はあったが言葉にすることはなく、この時初めてその気持ちを口にする。早く告白すればいいのにとやきもきしていた読者からすると、やっと思いを伝えられたことに感動した。東城がまた西野とつき合い始めた真中に遠慮していたからか、部室の扉越しに告白するのもいい。直接顔を見ないて想いを伝えるところに東城の性格がよく表れている。


東城の目の光がなくなるシーンが2つありそれも印象に残っている。1つ目は、2巻で西野が真中と別の高校に行って相手に合わせるのではなくそれぞれの夢を応援できるようなつき合い方をしたいという発言を聞いたとき。2つ目は17巻では真中から西野とまたつき合い始めたことを聞いたとき。このときは部活で作った映画を上映しておりバックで告白する東城の映像と重なっていた。東城の想いが届くことはないことを示しているようで作中で一番きついシーンだった。


東城は西野とは中学校は同じだが友達ではなく微妙な関係にある。東城が運動しなから告白すればいいんじゃないかと真中にアドバイスをしたため、真中は鉄棒で懸垂しながら告白する方法を思いつく。そのおかげで真中は西野とつき合うことになった。また2年の時の映画の主演に西野を推したもの東城である。その映画作り合宿の肝試しで真中と西野の距離は縮まった。東城は意図していないとはいえ恋のライバルに塩を送ったことになる。


西野について

西野はアイドル的な存在の女の子で学校外にもファンが多い。真中から懸垂をしながら告白されてつき合うことにする。他にもいろいろな人から告白されているのに、真中の告白をOKしたのはおもしろかったからだけではなく、前に友人をかばったのを見て知っていたからというのはよかった。


西野の魅力は明るく引っぱっていってくれるようなところ。真中とデートをする時もいつも西野がリードしていた気がする。何気ない動作や立ち姿が女の子らしくかわいいのがすごい。個人的にヒロインの中で水着姿が1番かわいいと思う。服のセンスもよい。冬にミニスカートは寒そうだが。


貸し切りのプールで カナヅチの真中の手を引いて泳ぎを教えたシーンが特に印象に残っている。真中を大切な女の子が溺れた時に助けられるような男にするために泳ぎを教えるというのはなんかいい。その後真中は教えられた泳ぎを活かして東城を助けることになる。


はじめは料理が苦手だったのに、真中と別れてからケーキ屋でバイトしてプロ並の腕前に成長する。西野が料理に目覚めたのは真中が映画作りに真剣だったからでお互いよい影響を与えているのがいい感じ。


真中について

周りに流されまくって17巻まで誰を選ぶのかはっきりしない。優柔不断すぎる。

東城と西野とさつきに対しては、はっきりと好きを自覚している。しかしさつきに迫られた時はいつも東城や西野のことを考えており、真中の中でさつきが一番になったことはない。真中が流されそうになった時、頭の中の巨大な東城と西野にはっきりしないまま女の子とそういう関係になるのはだめだと責められることもあった。


中3の時に西野に告白したのは本当に好きだからではなく、告白するというイベントにワクワクしていたから。高校受験でいちごバンツの女の子が東城だとわかり、一番好きだとはっきり自覚する。しかしその時は西野と付き合っているため別れを言い出せず告白もできない。中途半端な気持ちのまま高校1年の冬までつき合うが、西野に東城が好きなことを見抜かれ別れを告げられる。その後、東城とは映画作りを通していい関係だったがなぜか告白することはなかった。その後再会しバイトをきっかけに接点の増えた西野に告白されて西野を選んだ。


具体的に真中の気持ちを示す言動や行動を振り返ってみる。

2巻 東城を好きだとはっきり自覚するが、西野に別れを言えない。
3巻 さつきに告白され一緒にいるといつでも楽しいのが本当の恋なのかと考える。
4巻 みんなの前で本当は東城が好きだと言おうとするが黒川先生に遮られる。さつきにみんな同じくらい好きだと正直に言う。
5巻 西野だけを選べず別れを告げられて後悔する。
6巻 天地に告白されたのに自分にだけバレンタインチョコをくれた東城を抱きしめる。
7巻 西野と再会し東城とさつきへのチョコのお返しに差をつけようとしていたが同じものにする。
8巻 もらってばかりではいけないと思い東城とさつきからの誕生日プレゼントを断ろうとするが東条に祝いたいだけといわれて結局受け取る。
小屋で寒さをしのぐため裸で背中合わせに座り、真中君だからいいという東城を押し倒す。
9巻 西野の誕生日を覚えていて合う約束をする。
10巻 OKサインを出す西野に抱きついて押し倒す。修学旅行で東城とキスしそうなところを西野に見られて誤解を解くため会いに行く。
11巻 モノローグで西野とさつきに会ってなかったら間違いなく東城が一番なのに。2年のバレンタインで東城からチョコケーキをもらったのに西野からのチョコを期待する。
12巻 ホワイトデーのお代えしに東城にはクッキー、西野のクッキーは館長に食べられたため代わりにいちごパンツを贈る。受験の気分転換に海に連れていってくれた西野を大きな存在だと自覚する。
13巻 西野の寝顔を見ながら大切に思っていると。
14巻 3日間西野と旅行し明日の西野がずっと笑顔でいれますようにと笹船に願いを書く。
15巻 さつきだけを選べないけど一番自然体でいられるし今も好きだと言う。
16巻 東城に同じ大学を目指すのやめるかもといわれ落ち込む。演技で好きといわれそれが本当の気持ちなら全然迷いなんてなくなるかもしれないのに。西野から告白され夢みたいだ、二人とも初告白どうしで西野がいちごパンツだったことに運命を感じると。だが東条に男ができたことに納得できない。
17巻 西野のことが好きだ。半端な思いで選んだわけじゃない。女子から好きっていってもらえたのさつきが初めてだったから心地よくて手放したくなかった。
18巻 今は西野を大切にしていきたい。
19巻 東城とならなんだってできる気がしてた、一緒にいてそんな気分になれた女の子は東城だけだ。大好きな西野と共に新たな未来を描いていく。


中学生編の時だけ読んだら確実に東城と結ばれると思う。真中は東城といる時の方が楽しそうで表情もいいし、すてきな映画を作るという共通の夢も持っている。真中と付き合っていたのは西野だったが、学園のアイドルの西野に真中が無理をして合わせている感じに見えた。


真中は映画を作るという夢を持っていたり、まだ東城のメガネおさげ姿しか知らない時にブスだと影口を叩く男子に言い返したり、西野が絡まれている時に身体を張って助けたり、セクハラや痴漢から女の子を守ったりいいところもあるが、3股をかけていて女の子を何人も泣かせた罪が重すぎる。2~8巻では明らかに東城が一番好きだったが、さつきに迫られたり別れた西野と再会したりして迷いまくる。9巻からはどんどん西野を想うことが多くなっていき、告白されたことでやっと西野一人を選んだ。


西野と結ばれてからの話がしっかり描かれているのがいい。ラブサンクチュアリで西野との相性が良くないという占い結果を見たときにその紙を破り捨てたのは好感度高い。さつきと東城にも自分の想いを伝えて決着をつけたのがよかった。