エコトイレっていいな

生まれてから一度もトイレに行ったことがないという人間がいるだろうか、いやいるはずがない。アイドルはうんこなんかしないと信じている人もいるかもしれないが、3次元の人間である限り排泄をしないことはありえない。


人間の3大欲求といえば食欲と睡眠欲は確定でもう1つは性欲とかいうやつもいるが、欲求を満たさないと生命が維持できないという面から考えるともう一つは排泄欲である。プライバシーを保ちつつ排泄欲を満たすためにはトイレに行くしかない。人間の生活と切っても切り離せないもの、それがトイレである。


2013年にタイに行ったとき日本のトイレとの違いに衝撃を受けた。公衆トイレが有料、トイレットペーパーを便器に流してはいけない、水はひしゃくを使って流すなど。1秒でも早くトイレに行きたいときに小銭を入れないと使えないのはつらい。ケツを拭いたトイレットペーパーをすぐ横にあるゴミ箱に捨てるのは抵抗があるし、いろんなケツを拭いた紙がそばにあるのはなんか嫌だ。大のときにひしゃくで水をかけて流すのは意外と難しい。タイに滞在していたときは固い紙にやられたのか、うまく拭けていなかったのか、ケツの穴の痛みにたびたび苦しんでいた。


自分の経験や海外に行った知人からの話を聞く限り、日本のトイレは世界一だと思う。どこでも無料で使えるし、トイレットペーパーは便器に流していいし、レバーをひねれば水が流れるし、神社や公園のトイレでもきれいに掃除されている。ウォシュレット機能のあるトイレがあるのもいい。ケツの穴が痛くなったときに使える。もし自分が一人で風呂に入れないような要介護状態になってもウォシュレットがあれば安心だ。海外だと用を足したら1秒でも早く立ち去りたいトイレばかりだが、日本だと快適なためゆっくりしたいと思えるトイレが多い。便座の温かいトイレだと居心地がよすぎて居眠りしそうになるくらいである。


最近の日本のトイレといえば水洗式があたりまえである。水を流せば汚いものが流れていき目の前から消え去ってくれる。とはいっても見えなくなるだけで実際は下水道を流れていくだけなので、その場で処理されているわけではない。それらは下水処理場まで運ばれてからバクテリアやら微生物やらによって分解される。


家の近くに設置した浄化槽を利用しているところもある。浄化槽の中の微生物や消毒剤によって下水を川に流せるくらいきれいに処理するのだ。浄化槽はメンテナンスが必要で1年に1回くらいバキュームカーが底に溜まった泥を回収しにくる。どうしても回収するときに臭いが出てしまうのが難点だ。


もっと昔のものにはボットン便所(汲み取り式トイレ)と呼ばれていたものがあった。便器はなく小さな深い穴があるだけ。ボットン便所では排泄物をタンクのようなものにためておき、発生するガスは管を通して外に出していた。要するに放置プレイである。そのためタンクがいっぱいになると中身を回収しなければならない。今だとバキュームカーが定期的に来ることになるだろう。ボットン便所のタンクの雨よけがきちんとできていないと、大雨が降ったときに糞尿が外に流れだしてしまい周辺で遊んでいた子どもに健康被害がでるという問題がある。


今の日本でボットン便所を見ることはあまりないが、海外の地方などではわりとあったりする。下水道や浄化槽の整備が追いつかず水洗式トイレを作る余裕ないからだ。だからといって放置するのはよくない。それらの問題を解決するのがエコトイレだ。


エコトイレにもいろいろあるのだが、タイの山岳地帯で見たエコトイレは糞尿を発酵処理してから肥料として利用する肥溜めの仕組みを元にして作られていた。そのエコトイレの仕組みはトイレを使うだけではわからない。見た目は便器と穴があるだけで排泄物は見えない穴の中に落ちていくからだ。


聞いた話によると穴の下の土の中に3つのタンクが埋まっており、そのタンクどうしは管でつながっている。排泄物はタンク1→2→3と移動するうちに微生物によって処理されていき、最終的には肥料として使える状態になる。このエコトイレを動かすのには電気も水道も必要なく、修理する必要もないらしい。


ちょっと違うタイプのエコトイレも目撃した。山の上にある寺の公衆トイレを利用したときのことである。便器の穴の奥には木で作ったおがくずがためられており、洗浄ボタンを押すと奥の方で鉄のスクリューが回って排泄物が木くずに埋まっていった。


快適に使うことだけを考えれば日本の水洗式トイレは最高なのだが無駄が多いとは思う。排泄物を流すのに何リットルものきれいな水を使うのはもったいないし、そのために下水道や浄化槽を整備するのはコストがかかる。流すのに使った水はきちんと処理しないと再利用することはできない。日本は今のところ水不足では困っていないが、水は限りある資源なので大切に使うにこしたことはない。


水洗式トイレは災害のとき電気や水道が止まってしまったら使えなくなるという問題もある。そんなときのためにエコトイレもあればいいと思う。それ単体で処理までしてくれるエコトイレは災害時にうってつけだ。だがウォシュレットは水洗式トイレならではであり、エコトイレでは使えない。将来のためにウォシュレットも残しておきたい。


水洗式トイレのほうが使い心地はいいが、災害時や環境のことを考えるとエコトイレのほうがいい。特に山の上の一軒家とかなら周囲への臭いを気にする必要もないので、水も電気も使わない壊れにくいエコトイレのほうがいい気がする。もっとエコトイレが広まっていってもいいと思う。