大人になると漫画を純粋に楽しめなくなることもある

中学生のときにはじめて全巻揃えた漫画がある。あらすじと表紙の雰囲気だけでよさそうだと思い1巻だけ買ってみたところ、おもしろかったので続きも購入することに。本屋にちょこちょこ通って最新刊を見つけては買っていた。一冊ずつ買っていたので10円、20円と値上がりした巻なども覚えている。全15 巻揃えてからはあまり読み直すこともなく実家の本棚に入れたままにしていた。


自分の中では子どものときの思い出が美化されているのもあって、この漫画だけは売ろうと思ったことは1度もなかった。そんな漫画を知人に貸すことになり、感想を共有するために10年ぶりに読み返してみた。すると学生のときはなにも感じなかった点に引っ掛かり、純粋に物語を楽しめなくなっている自分に気づいた。


1250円のケーキを500円しか持ってきてない子どもに渡してしまうよりお金が足りなことをちゃんと伝えたほうがいいのではないか。子どもがケーキを食べたがっているからといって親のいないところで食べさせてしまうのは虫歯や肥満の面でよくないのではないか。休業の張り紙をしたり入店料をとられるという噂を流す営業妨害は悪質すぎないか。喫茶店でタバコを吸う友人に不快感MAX。劇の感想で女装王子がちゃんと女の子好きでよかったと言ってたが別に男の子が好きでもいいじゃないか。


時代の流れもあってか昔は気にならなかった細かいことが気になる。これが年を重ねると地雷が増えるということか。だが今の年になったからこそ気づける魅力もあった。明るくニコニコしているだけでなく理不尽なことにちゃんと怒れる主人公とか、施設から子どもを引き取って育てる店長の人間的完成度の高さとか。あいかわらずギャグは笑えるし全体的にはとてもおもしろいという評価は10年経っても変わらない。


だからこそネットでこの漫画に対する批判的なコメントを見た時は傷ついた。背景が白いとか絵が下手とかあるキャラが某少年マンガのパクリとか。自分は背景の描きこみが少なくすっきりしているところが読みやすくて気に入っているし、絵はキャラの笑ったり照れたりする表情が魅力的で3巻と8巻の表紙好きだし、某少年マンガのキャラと似ているのは髪色くらいだしこっちのキャラにはこっちにしかない魅力があるんだよと言い返したい。


まあ絶賛するコメントばかりではなくアンチもいるということはある程度人気のある漫画だという証でもあるし。攻撃的なことを言っている人は、他を認められないほど自己肯定感の低いかわいそうな人なんだろうなと思うようになったので昔ほどはショックを受けなくなったが。やはり自分の好きなものが批判されるというのはつらい。自分で気に入らない点を言うのはよくても他人から言われるのは許せない。なんて面倒な大人になってしまったんだ。


もうこの先子どものときのように純粋な気持ちで漫画を読むことはできないだろう。だが今の年になったからこそ気づける漫画のよさもある。他者と感想を共有することが改めて漫画を見直すきっかけになったりもする。また昔好きだった他の漫画も読み返してみたいと思う。