テレワークできる仕事はほんの一部

コロナか流行ってから急にテレワークが推奨されるようになった。だがテレワークができる仕事はほんの一部である。いつも通勤で乗っている電車のテレワークへのご協力よろしくお願いしますというアナウンスに軽くいらっとする。一社員にどうにかできる問題ではない。


ちなみにテレワークの東京での普及率は45%だが、地方では3%のところもある。地方ではテレワークを導入しているほうが珍しいし、全国的にみても20〜30%とまだまだ少数派だ。テレワークができないのにはさまざまな理由がある。


まずテレワークが不可能な仕事があること。人間の体に触れる必要のある医師や看護師はテレワークできない。同じ理由で保育士、介護士、美容師、ネイリスト、整体師やマッサージ師なども。将来的に遠隔で自分の手のように操作できる高性能なロボットが開発されれば可能かもしれないが、技術的にも費用的にも遠い未来のことになりそうである。


タクシーやバスやトラックの運転手もテレワークできない。車の自動運転技術はどんどん進化しており高速道路は走れるくらいになっているが、一般道を走れるのはもうちょっと先になりそうだ。それに自動運転が一般道で使えるようになったとしても、荷物の上げ下ろしは人間の手がないとできない。特に家のドアの前までいろんな大きさ、重さの箱を一つずつ運んでいくことはロボットでは難しいと思う。


コンビニやスーパーなどの店員もテレワークできていない。大型店舗ではセルフレジを導入したり店内にお掃除ロボットを走らせたりと店員の数を減らす工夫はしているが、品出しやセルフレジの不具合対応のためにゼロにすることはできない。小さい店では機械を導入する余裕がないためレジの周りにビニールシートを巻く、小銭はトレイに乗せて受け渡しするなどの工夫をしている。


あとは工場にある大きな機械を操作しないとできないような作業やベルトコンベアを使って1つの製品を大量に生産する仕事、大型家電や車や家など大きなモノづくりをする仕事はテレワークできない。他にもあるかもしれないが、とりあえず思いつくのはこれぐらいである。


逆にテレワークできる仕事はパソコンだけで完結するような仕事である。人事・経理・総務などの事務職、ライター、翻訳家、イラストレーター、デザイナー、カスタマーサポート、電話やメールでの営業など。システムエンジニアプログラマもテレワークしやすい仕事だとよく言われている。


だがこれらの仕事も設備をそろえなければテレワークできない。プログラミングをする仕事なら社員一人一人の自宅に画面と容量の大きいパソコン+ディスプレイ2つを準備できなければ作業効率はめちゃくちゃ悪くなる。プログラミング言語を使うためのツールを使うならライセンスの問題がある。もしそれらの課題をクリアできたとしても、セキュリティの問題で自宅からは本番環境にアクセスできなかったりする。


紙の書類が多いとかハンコを押す必要があるとかは、さっさと電子データ化してやり方を変えればいいじゃないと思うが。機器とかライセンスの問題は会社のパソコンやディスプレイを自宅に持って帰ることでなんとかならないんだろうかと思う。


また同じ会社内でもテレワークできる仕事とできない仕事があったりする。部署も職種もローテーションするような企業なら問題ないが、固定しているところだとテレワークできる社員とできない社員がいるため不公平感が出てしまう。まあオフィス内の密を避けるために出社する社員を減らすという目的なら問題ないが。


不公平感というなら企業規模によるテレワークの実施率の違いのほうか気になる。従業員数別のテレワーク実施率は1000人以上の企業では42%なのに、99人以下の企業ではたった6%。自分の知り合いに聞いてみても、大多数が名前を聞いたことがあるような大企業に努めている人はテレワークしているが、それ以外の人は全くしていない。


年収の高い人ほどテレワークしている割合が高いというデータもあるようだ。まさに格差社会。大企業に勤めている人は給料も高いしテレワークもできるし、濡れ手で粟というわけだ。テレワークしていない職場に勤めている人間は上司に希望を言ってみるくらいしかできない。会社がテレワークを導入しようとしていなければどうしようもない。


まあテレワークを導入している会社でも全く出勤しなくてもいいというわけではなさそうだが。やはりオフィスでやったほうが効率のいい仕事もあるのだろう。テレワークできない仕事であげた医師や保育士でもカルテや報告書の作成はテレワークできる。職場内で仕事をローテーションすれば誰でも週1、2日はテレワークできるのではないだろうか。


2021年10月現在、コロナ新規感染者数が落ち着いてきたためかあまりテレワークテレワーク言われなくなってきた。自分の職場にテレワークが導入されるのはもっと遠い未来になりそうだ。コロナのためだけではなく、労働者のワークライフバランスのためにテレワークできる仕事が増えることを願う。