なぜ自治体は戸籍を郵送で請求するときの手数料を為替で欲しがるのか考えてみた

あるとき本籍地の変更手続きをするため戸籍謄本が必要になった。本籍地は親の実家で遠方にあるため郵送で取り寄せる必要があった。それに必要な手数料450円を定額小為替で送れと言われたので、仕方なく仕事の昼休みに郵便局へ行った。


郵便窓口で定額小為替くださいと言ったら別の窓口に回れと言われる。時間がないのにと軽くイラッとする。そして普通に450円出そうとしたら発行手数料で+100円かかりますと。高すぎるのにびっくりして思わず聞き返してしまった。元値の22%って。そもそも手数料を払うのに手数料を払わなければならないっておかしくないか。予想外の出費があった上に手続きに時間がかかったのでイライラがおさまらなかった。郵便局の窓口スタッフに罪があるわけでないが。


定額小為替とは現金に交換できる紙のことである。郵政民営化前の発行手数料は1枚10円だったが、平成19年10月1日から十倍の100円に値上がりした。この手数料は定額小為替の金額にかかかわらず一律100円であるため、50円の定額小為替を購入するときに元値の3倍の150円支払わなければならないという奇妙なことがおこる。しかもこの手数料は2022年1月17日よりさらに2倍の200円に値上げするという。


個人が戸籍謄本を取り寄せることはあまり多くないとはいえこの手数料の高さは納得しがたい。手数料は税金として集めるのなら発行手数料のかからない収入印紙でもいいじゃないか。そもそも戸籍謄本なんか今はプリンターで簡単に印刷できるのに450円もとるのに納得できない。切手を貼った返信用封筒を入れて送れとかこっちに面倒を押しつけておきながらこの高額な手数料はいかがなものが。


そういえばマイナンバーカードを作ったら戸籍謄本もコンビニで交付できると聞いたようなと思って調べてみる。確かにできると。ただ住民票がある自治体と本籍地がある自治体が異なる人はコンビニ端末で利用登録申請をする必要があるらしい。その申請には「本籍」と「筆頭者氏名」を正しく入力する必要がある。それがわからない人は問い合わせても電話では教えられないので住民票の写しを取得しろと。それにも手数料300円かかるんですが…。申請内容に誤りがなければ2~3開庁日後にやっとコンビニで取得できるようになる。ちなみに申請状況は申請時に表示される申請番号(16ケタ)を使って外部サイトで確認しなければならない。


日をおいて2回もコンビニに行かないといけないうえに手続きがかなり面倒くさい。コンビニ交付でも手数料は同じく450円とられるし。本籍と筆頭者氏名がわからなかったら300円払って住民票の写しを取得しろというのはひどい。


そもそも手数料が必要な証明書を求めるのは行政機関ばかりである。結婚・離婚手続きする市役所とか、国家資格免許の手続きをする保健所とか、パスポート申請をするパスポートセンターとか、相続の手続きする法務局や税務署とか。最近は賃貸物件を借りるときも銀行口座を作るときも戸籍謄本や住民票を求められることはない。もしあってもコピーで問題ない。原本を欲しがるのは行政機関だけである。住民票や戸籍謄本にはわざわざコピーしたら無効という文字が大きく出るような細工までして。手続きに必要だからと理由をつけて行政機関がお互いに手数料を稼ぐために無理やり仕事を作り出しているのでないかと疑ってしまう。


そもそも結婚・離婚や相続手続きをするときに親子関係を確認するために戸籍を見るというのはわかるが、本籍地で住所を指定する必要はあるのだろうか。今住んでいる住所とは全く関係ないのに。


未婚の子どもの本籍地はほとんどが親と一緒である。たとえ親元を離れて住んでいようと本籍地はそのままで問題ない。だが戸籍謄本を取り寄せようと思ったら本籍地のある自治体に請求しなければならない。


なら本籍地も住民票を移すときに一緒に今住んでいる自治体に移せばいいのかというと、それにもデメリットがある。まず戸籍は家族単位で設定されているため、未婚の子どもが本籍地を変えたら、同じ戸籍にいる父母や兄弟姉妹みんなの本籍地も変わってしまう。自分だけ本籍地を変えたいなら今の戸籍を抜ける除籍手続きをしてから転籍手続きをするしかない。


ただし本籍地を変えると相続手続きが面倒になるというデメリットがある。相続手続きをするには亡くなった人の出生〜死亡までの全ての戸籍を集める必要がある。亡くなった人がずっと本籍地を移してなければ請求先は1箇所で済むが、何度も本籍地を移していればその本籍地がある自治体全てに請求しなければならない。


自分が死んだ後のことなんか知るかという気持ちもあるが、親や兄弟姉妹に迷惑をかけることを考えるとあまり積極的には本籍地を変えようとは思わない。だが今の戸籍制度では結婚した場合は親の戸籍から出て新しい戸籍が作られるため、少なくとも夫婦どちらか一人の本籍地が変わってしまう。


そんな本籍地は日本国内ならどこの住所でも好きに選べるらしい。皇居とか大阪城とか東京ディズニーランドとか。皇居の住所は東京都千代田区千代田1−1だから覚えやすくていい。住民票の住所はたびたび確認する機会があるから覚えているが、本籍地なんか覚えていない。皇居なら記憶に残るし忘れても住所検索すれば一発で出てくる。皇居を本籍地にしている人は何人もいるが、他の家族の本籍地とかぶっていてもなんの問題もない。


だったらみんな本籍地は日本でいいじゃないかと思う。住所は住民票で管理しているんだから、本籍地を指定する必要はない。本籍地はインデックスとして使われているとかいうが、インデックスなら住所より番号のほうが便利である。市町村合併で住所が変わることもあるのだから、なおさら本籍地をインデックスにするべきではないと思う。昔は住民票がなかったから本籍地が必要だったらしいが、今はどう考えても必要ない。


そして戸籍の請求は全国どこででもできるようにしてほしい。本籍地に関係なくどこの自治体でも手続きできるように。昔は全て紙に手書きで管理していたから日本人全員の戸籍を1箇所で管理するのは難しかったかもしれないが、現在はコンピュータで一元的に管理できるはずである。


というか戸籍の電算化は1995年から始まっており2015年には98%が完了していた。現在はほぼ全ての自治体が戸籍をコンピュータで管理しているはずである。なのになぜ市町村ごとに分けてやっているのか。


まさか為替で受け取った手数料を自治体の職員が懐に入れてるんじゃないか、収入印紙だったら確実に税金として納められてしまうから為替しか認めてないんじゃないかと深読みしてしまう。


ネット検索していると2019年に戸籍法が改正され、戸籍謄本や抄本が本籍地以外の市町村でも取得できるようになったことがわかった。だがそれが実現するのは2024年予定だと。ちょっと遅い。それに窓口に行けずに郵送で請求する人は結局今と同じ扱いということなのか。せめて手数料の支払いは収入印紙でもOKにして、手数料に切手代も含めてよいので返信用封筒は市町村で用意してほしい。


韓国は2007年に戸籍を廃止したらしい。そしてこれまで一つの戸籍に記載されていた事項が、いくつもの証明書に分かれて記載されるようになった。それにより相続時に必要な証明書はわかりづらくなった。


日本も韓国のように戸籍を廃止するべきだとは思わないが、今の時代にあった改正は必要だと思う。夫婦別姓はOKにするとか、母が元夫との離婚後300日以内に子を出産したときその子を元夫の子として扱うのをやめるとか。


日本の戸籍は先祖をずっと追っていけば家系図が作れるから優れているとか、過去の記録をずっと残しているから差別の原因になるとかいう意見がある。ただ戸籍が必要がどうかと手続きの面倒さは別の問題である。市町村には戸籍を請求する手続きを速やかに改善してほしい。