除草剤ラウンドアップは本当にやばいのか

ラウンドアップを知っているだろうか。これから語りたいのは端数を切り上げするExcelのROUND UP関数のことではない。今は亡きモンサント社が製造していた除草剤ラウンドアップのことである。


ラウンドアップはとても効果の高い除草剤でどんな植物に対しても効果を発揮する。ラウンドアップの成分であるグリホサートは安全性が高いといわれている。毒物には分類されないとか、土壌ですぐ分解されるとか、植物特有の経路にだけ作用するから人体には安全だとか。


モンサント社は別会社に買収されたためモンサント社という名前の会社は今は存在しない。だが技術や製品は残っている。ラウンドアップの特許の有効期限は切れているため、日本の会社が同じ効果の類似品を名前を変えて製造、販売していたりする。例えるならジェネリック医薬品の除草剤バージョンである。


モンサント社は除草剤とそれに耐性のある遺伝子組み換え作物の種苗をセット売りし、関連会社を買収することで、強引にシェアを広げてきた。モンサント社は自社の種苗を植えて穫れた種を次の年に使い回すことも認めておらず、農家に裁判を起こしたりもしていたらしい。法には触れていないがズル賢い。そんな話を聞いてからモンサント社にもラウンドアップにも悪いイメージを持っていた。


自社の種苗によって遺伝子組み換え作物を増やしているのもモンサント社のイメージがよくない理由の1つである。遺伝子組み換え作物は自然には生まれないものを人工的に作り出しているから、人間が食べたときになにか悪影響があるのではないかと疑ってしまう。とはいっても今ある野菜や果物のほとんどは品種改良したもので遺伝子組み換えと似たようなことをやっているらしいが。除草剤ラウンドアップの危険性とモンサント社のイメージの悪さは別問題である。


ネット上で見たラウンドアップ過激反対派の主張にはこんなものがある。ラウンドアップにはベトナム戦争で使っていた枯葉剤と同じ成分が含まれている。世界各国はラウンドアップを締めだそうとしているのに、日本の政府は企業からお金をもらって不都合な事実を国民に隠したまま大量に輸入している。モンサント社ラウンドアップによってガンになるという研究結果を隠蔽していたが、腫瘍ができてパンパンになったネズミの写真があるとか。


事実なら怖すぎるので陰謀論として片付けたいところである。だが現実に日本政府はあまりニュースに取り上げられないうちに2018年に種子法廃止、2020年に種苗法改正の法案を成立させている。これによってモンサント社のような会社が日本の種苗市場に進出しやすくなった。ラウンドアップを散布していて悪性腫瘍ができたという人も実際にいるらしい。なので全て陰謀論だとは断定できない。


ラウンドアップに含まれる成分のグリホサートについては世界各国の機関で研究がされている。安全性を疑われているからこそたくさん研究がされているという点では安心できる。とはいっても数十年後の影響を追跡するのは難しいし、世代を飛び越えてまで調べるのは不可能に近い。4世代にわたってネズミへの影響を調べた研究はあるらしいが、人間への悪影響があるかないかということについては未だに結論が出ていない。


ラウンドアップを過去に散布していて悪性リンパ腫になった人が、モンサント社に裁判を起こして勝訴したというニュースもあった。だがこの判決でラウンドアップに発がん性があることが認められたというわけではない。モンサント社ラウンドアップは絶対に安全だと宣伝していたことが問題とされただけである。


その人がラウンドアップだけのせいでがんになったのかどうかは結局わからない。だが植物を枯らすものが人体に全く影響を及ぼさないとは考えにくい。影響は量や濃度によって大きく異なるだろうし。除草剤として使うときに芽が出る前の土にかけるのと、収穫前の作物にかけるのではわけが違う。決められた量なら無害だという研究結果があったとしても安全だとは言い切れない。


そもそも農業をするのに除草剤って必ずしも必要なのだろうか。大規模農業には必須だと言われているが、家庭菜園くらいの規模なら除草剤を使わなくてもなんとかなる。除草剤を使っているといずれは耐性のある雑草が生まれてくるため、さらに強力な除草剤を使わなければならなくなるという説もある。


なんとか除草剤を使わずに農業する方法はないものか。そもそも日本は山地が多いので大規模農業は向いていない。農地は住宅の周りにあることも多くアメリカのように除草剤を空からばらまくこともできない。日本人は家庭菜園している人が多いんだから、それを利用して小規模農家を増やせば除草剤なしでも食料自給率を上げられるのではないか。


日本の農業問題についてはまた別の機会に語るとして、とりあえず家庭菜園では除草剤を使わないことにする。そして玄関の前や塀の周り、道路の脇など作物を育てることがなく雑草を絶対に生やしたくないところにだけ除草剤を使うつもりだ。散布するときにはゴム手袋と安全メガネとマスクで自分を守りながら、使用は必要最低限の量に抑えようと思う。