『進撃の巨人』を最終巻まで読んだ感想

進撃の巨人が完結した。自分が進撃の巨人を知ったのはアニメから。立体起動装置の動きはアニメがわかりやすくていい。2013年に放送された第一話でエレン母が目の前で巨人に食われたシーンの衝撃は忘れられない。巨人はなんか歯が多いし表情が絶妙に気持ち悪いし。後からその巨人がグリシャの前妻だったことがわかって余計に怖かった。 


そこからなんとなくアニメを見るようなって、漫画をところどころレンタルし最終巻まで読んだ。全体的な感想としてはすごく壮大な物語だったなという感じ。民族差別とか戦争とか深いテーマも描こうとしていた気がする。サシャとガビとカヤの話はよかった。島の悪魔であるサシャを殺したと誇らしげに言うガビを殺そうとするマーレ人がいるなか、サシャの父母はガビを許すといい、サシャをお姉ちゃんと呼び慕っていたカヤはガビを殺そうとし、後にガビはカヤを助けるとか。ジャンがマルコの死の真相を聞き、もういいってと口ではいいながら謝るライナーの顔面をボコボコにするのもなんかよかった。


最終回の感想としては話が壮大になりすぎたのを無難にまとめたなという感じ。「そんなの嫌だ、ミカサに男ができるなんて、一生オレだけを思っていてほしい、オレが死んだ後もしばらく、10年以上は引きずってほしい。」にはエレンにも人の心が残ってたのかとなんか安心した。お前のことがずっと嫌いだったとミカサに言ったときはどんな気持ちだったのか。結局「駆逐してやる、この世から一匹残らず」という決意をエレンは実現させたことになる。最終巻の「私は強い」というミカサはエレンを失ったと思い自暴自棄になっていた時とは違って仲間を守るため自らを奮いたたせようとしている感があってよかった。マフラーを巻いてくれた鳥にミカサが「エレン、マフラーを巻いてくれてありがとう」と言うラストは素敵だと思う。


ただ最終的に人類が死に過ぎて今までやってたことはなんだったんだという無常観もある。進撃の巨人でショックの大きかったシーンはいろいろある。奇行種に目の前で仲間を食われてキレたエレンが突っ走ったことでアルミン以外の班員が全滅しエレンも巨人に食われる。アニメではわかりにくくなってたが下半身のない仲間に心臓マッサージをする兵士。女型の巨人に精鋭のリヴァイ班が全滅させられたときの絶望感。アニメでは死体を捨てるシーンも追加。エルヴィンが獣の巨人に突撃する捨て身の作戦とそれに従い死んでいく兵士たち。パラディ島に宣戦布告する演説会場を巨人エレンが襲撃して民間人にも死傷者多数。


それでもあんまり暗くなることなく進撃の巨人を読めるのはシュールギャグがちょこちょこ笑えるから。逆だコニースプリンガー、ふかした芋です、入隊式に芋を食い半分といいながら小さい芋を教官に差し出すサシャ、サシャの放屁です、アニに蹴り転がされ同じポーズになるエレンとライナー、こいつをやつらのケツにぶちこむ、結婚しよ、特に理由のない暴力がライナーを襲う!、俺が鎧でこいつが超大型巨人ってやつだと急にばらし始めるライナー、エレンの家ぇがああああ(イェーガー)、エレンとジャンが殴り合いながら誰か止めてくれ、そこのボク甘―いキャンディはいかがかな?キミだよカッコいいねチビッ子ギャングかな?、おまえモテないだろ→モテたことくらい…ある、巨人の口の中なんて二度とごめんだ→車力は歯磨きとかしないの?→…失礼ですよ女性に対して、ポルコ!ザシュキャアアアギャアアア痛ったああああ。


宗教画のような雰囲気のある絵もいい。なぜなら俺は始祖ユミルを信じている!俺たちは選ばれし神の子!ユミルの民だ!おおおおぉおお、銃口を口の中に入れて虚空を見つめるライナー、私が憎くないの?というガビを後ろから刺そうとするカヤ。


いろいろ振り返ってみると訓練兵時代が一番平和で楽しかったなと思う。立体起動装置の姿勢を保つ訓練ができず涙目になるエレン、ジャンと喧嘩して服が破けちゃうだろうが!と言ってたエレンがなつかしい。やった!討伐数1!は笑った。アニが敵だとわかってもすぐに攻撃できなかったり、ライナーとベルトルトに裏切られたことを知ってこの裏切りもんがーと感情的に戦ったりするところがなんかよかった。仲間を守るため手を噛みちぎって必死に戦おうとするところは応援したくなるし、わりと共感できるところが多いので海を見るまでのエレンはかなり好きな主人公だった。とんでもない力を手に入れた後のエレンはなにを考えているのかよくわからなかったが。エレンの意思ではなく力に振り回されたことによる行動もあったんじゃないだろうか。母を殺されたから巨人を駆逐してやる、壁の中に閉じ込められて家畜のように暮らすよりは命の危険を冒してでも外の世界に行きたい、他人から自由を奪われるくらいなら俺はそいつらから自由を奪うというのはわかる。


ミカサはエレンに関することのメンタルは弱いがフィジカルがめちゃくちゃ強い。特にアニメの立体機動装置を使った動きは1番かっこよかった。「私の特技は肉をそぎ落とすことです」がなんか好き。女型への「落ちて」が美しい。ライナーとベルトルトが敵だとわかってすぐの攻撃に全く容赦がなかったのがすごい。まあエレンを守るという理由があったからだと思うが。エレンに嫌いといわれてもずっとエレンを好きだったと思う。エレンが死んだと思ったときにエレンを思い出すために生きることを決意してたから、最終話の後も長く生きてくれるだろうと思う。きっとエレンのことを10年以上は引きずったはず。


アルミンはフィジカルは弱いが、演説でエレンの巨人の力をアピールしたり女型の正体を見破ったりと頭脳の面で活躍した。エレンに氷の大地や砂の山と外の世界をプレゼンした重要人物でもある。超大型に丸焼きにされたときはショックだった。その後はあまり活躍もなかったし。ファルコを母巨人に食わせようとするコニーを身を挺して止めたのはよかった。


また2022年の1月からアニメのファイナルシーズンが放映されることになっている。アニメは漫画にはないストーリーが付け足されたり演出が違ったりしているので、最終回がどのように描かれるのか楽しみにしている。