『累ーかさねー』を読んで醜い者は損をするという残酷さを感じた

友達に借りて一巻だけ読んだことのある『累ーかさねー』が映画化されたという噂を聞いて続きが気になったので、全14巻を一気にレンタルして読んだ。口づけで顔を奪うという設定はファンタジーだがそれ以外はかなり現実的で、物語に引き込まれてかなり集中して読んだ。

 

累は生まれつき醜い顔を持つが、天才的な演技力を持っている。累がきれいな顔を奪って、演じる時の表現力がすごい。漫画の絵はどちらかというとシンプルなのだが、目力や表情に魅せられた。特にカムパネルラとサロメは存在感がある。まっすぐ相手を見つめ返し、どんな嘘であろうと真実に変えてしまうほどの演技力を持つのはうらやましい。そんな演技力を身につけられたら就活の面接で苦労することもないだろう。

 

この物語から一番感じたメッセージが、美しいか醜いかで人生が変わるということである。累は美しい顔でいるときは自信たっぷりに誰にも真似できないような演技力を見せつけるのに、元の醜い顔に戻った途端に周囲の目が気になり、自分のしぐさに自信がなくなり挙動不審になる。そして累は女優として成功するには美しい顔を奪うしかないと思いこんで、罪を重ねてしまう。

 

累の一番の罪は、ニナが自分から死を望む状態まで追い込んでしまったことだ。累はニナが植物人間になってからもずっと話しかけ続けたり、罪の意識から妹に顔を奪う力を持つ口紅を託したりと悪になりきれないところがあった。醜い顔を持ったことで周囲からいじめられたり、親戚から冷遇されたりだったので、累には幸せになってほしいと思ったが、なかなか結末は残酷だった。娘を奪われ孤独になったニナの母親の気持ちを考えると、累を許すことは決してできないだろう。

 

ラストは羽生田さんが顔の変わった累のもとへ向かうシーンで終わる。自分はなんらかの理由で全てを知った羽生田さんが、累を見つけ出して一緒に生きていくという希望のあるラストだと思ったが、他の人の感想を読むと母と同じ悲劇を繰り返すのでは?と考えていた人がいた。累の母も醜い顔を持つことで結局幸せにはなれなかったので、累も同じようになってしまうのかと考えるとぞっとした。人によって捉え方の異なるラストなので、自分は希望のあるラストだと信じていたいと思った。