『銀魂』が実写化されてよかったこと

このところアニメ化されている漫画がよく実写化されている。漫画からの実写化より漫画→アニメ化→実写化の方がハードル高い。なぜなら実写ではアニメ以上に漫画のキャラクターを再現することが難しいからである。


漫画には声がついていないので、漫画を読む時は自分のイメージのままに頭の中でキャラクターに声をつけている。そのため漫画をアニメ化する時に声のイメージが違うという感想を持つことはよくある。しかし長期間アニメを見ていると、だんだん漫画を読むときにも頭の中に自然に声優の声が流れるようになってくる。


だからアニメ化されてからの実写となると声+ビジュアルの変化がおこる。アニメの声優と声は全く違うし、二次元のキャラクターを生身の人間が演じるとなると顔を同じにすることもできない。そのためアニメを知っている人間からすれば声にも見た目にもギャップを感じてしまう。


銀魂は漫画が原作でアニメ化され何年も放送されてきた。そのため実写化はかなりハードルの高いものだったが、想像していたよりはよかった。その一番の理由はキャラクターがよく再現されていたからだと思う。映像で見てお前誰や?というキャラは一人もいなかった。声に関してはアニメに慣れ親しんでいたため違和感ありありだったが。


銀魂の実写化は、漫画だけ読んだことある人、アニメも見ている人、実写化で初めて見る人など、事前に銀魂をどれだけ知っているかによって感想は違ってくるだろう。ちなみに自分は漫画全巻そろえて持っていて、アニメも夕方に放送されていたころには欠かさず見ていた。既に漫画を読む時は頭の中に声優の声が流れるレベルに達している。アニメの劇場版も映画館まで見に行ったくらいのそこそこの銀魂ファンだ。


とはいっても実写版は脚本を書く人も演者も違うため、アニメと同じものを求めているわけではない。ストーリーが違ってもオリジナルキャラクターが登場していてもいいから、実写は実写ならではのよさを出してくれればいいと思っている。実写版は二次創作だと思って見ることにしている。そう思えば原作と違っていても自然に受け入れられるからだ。


銀魂の実写化に興味を持ったきっかけは原作者である空知先生が、コミックスで実写のことを豪華な学芸会だと言っていたからだ。もともと実写化の話はあって先生は勝手にやってくださいというスタンスだったそうだが、監督が勇者ヨシヒコと魔王の城を手がけた福田准一になって期待しているというような話だった。そこで検索して調べてみると、自分でも名前を知っているような豪華なキャストでビジュアルの完成度も高かったので、DVDを借りて見ることにした。カブト狩り回と紅桜編をミックスした話だった。


まず一人ひとりの印象
小栗旬は銀さんがギャグで黒目になった時の変顔に似ている、足蹴りかっこいい
菅田将暉の新八はよく馴染んでいる、殴られる時の顔がいい、ちょっとツッコミが弱い
○橋本環奈は声が個性的だがかわいい、鼻をほじりながらシミ付きバンツを連呼する顔は腹立つ
中村勘九郎の近藤の全身はちみつ漬けの変態感がやばい
柳楽優弥の土方はタバコの煙で顔見えない
吉沢亮の沖田は顔がよすぎる、白シャツで前を閉めないのがセクシー
長澤まさみのお妙さんはバットで近藤さんをホームラン
岡田将生の長髪桂は漫画よりイケメンだが短髪はクセがすごい
堂本剛の高杉はあまり強そうに見えない、足がきれい
佐藤二朗の武市は気持ち悪いフェミニスト感でてる
菜々緒のまた子は足長い、怒り方が似ている
新井浩文の似蔵のやばい奴感
早見あかり鉄子は普通によい
安田顕の鉄矢の唾がとぶほどの大声と目力
○エリザベスと定春はCGで不気味


ちなみにエリザベスの中には山田孝之がいて声だけ出演。定春の声は高橋美佳子、松陽の声は山寺宏一とアニメと同じ。特におっさんキャラが魅力的で新井浩文の似蔵や安田顕の鉄也は漫画やアニメそのままの印象だった。主題歌はアニメのDOES「修羅」が好きだったのもあるがUVERworldはなんか合わない。


銀魂は基本ギャグだがシリアスもあり戦闘シーンがかっこいいところが魅力だと思っている。パロディは各方面から怒られそうなほど振り切っているのがいいところだが、実写ではパロの数が多すぎてテンポが悪くなったのが残念だった。寄生獣オバQ宇宙戦艦ヤマトバカボン妖怪ウォッチなどしつこいしほぼ笑えない。ガンダムのシャアに六角精児を使う意味あった?


銀魂の実写ではギャグと戦闘シーンがなかなかよかった。銀時と仁蔵の初戦は漫画だとちょっと蹴ったくらいで一方的にやられた感が強かったが、映画だとわりと善戦しており蹴りなど盛られていてよかった。冒頭の新八と銀さんの出会いからカブト狩りまでの流れはテンポもよくかなりおもしろい。初めて見る人のためにテロップでキャラがさらっと紹介され、土方は超絶マヨラー沖田はドSとしか紹介されてないのに笑った。


オリジナルのギャグもありちょっとおもしろかった。原作のファンは超辛口のレビューとかするけど原作知らない人はとっても甘やかしてくれるとか、エリザベスは実写だと着ぐるみ感怖いとか。小栗旬が自作した自分の名前だけをアピールするOPがカラオケビデオかよとつっこまれたところ、新八が船に潜入した時に怪しまれると「俺だよオレオレ」と言ってごまかすところ、神楽を助けるために一人で片袖脱いでかっこつけて乗り込んだのに、急に不安になって服を治す時にボタンを留める音が聞こえるところがおもしろかった。あと中の人ネタでは橋本環奈の千年に一人の美少女の写真に神楽の写真を似せたり、花より男子に出ていた小栗旬がまーきののイントネーションでかーぐらと言ったり。


アクションでは銀さんの初登場で天人に飛び蹴りをくらわすシーンや、桂が新選組を何人も峰打ちで撃退するのはかっこよかった。漫画の山場は桂と銀時が退路を開くため天人をなぎ倒しながら高杉を斬る宣言をするところだが、実写の山場は高杉VS銀時だった。剣での戦いはスピード感があって意外とよかったが、殴り合いになった時に身長が低く体格も劣る高杉が圧倒的に弱そうに見えた。神楽VSまた子は神楽がまた子の足をつかみながら足元で動き回り至近距離で弾丸をよけるシーンがすごかった。


紅桜編にはいくつか印象的なシーンがあるがそれらがよく再現されていたのがよかった。重症を負って銀さんが追い詰められた時に新八が以蔵に斬りかかるシーン、神楽がまた子に撃たれ倒れても立ち上がるシーン、拳銃の弾を両手と口で受け止めて笑うシーン、銀さんが紅桜をかわして剣を上からつき立てるシーンなど。


漫画で印象的なセリフも使われていた。「ギャーギャーギャーギャーやかましいんだよ。発情期ですか、コノヤロー」がニャーニャーに変えられていたのはあれ?と思った。以蔵の「それにしても桂ってのは本当に男か?この滑らかな髪、まるで女のようだ」はいやらしさもあり再現性が高い。銀さんが鉄子に言った「お前のツラの皮は月刊少年ジャンプですか」はタウンページですかに変えられていた。銀時とお妙さんの「かわいくねー女」「ばかな人」は棒読み感あったが、漫画と同じようにお妙が万事屋の窓から銀さんを眺めながら言ったのはよかった。漫画では銀さん一人が普通の調子で言っただけの「宇宙一バカな侍だコノヤロー」を二回も万事屋みんなで叫ぶのはなんか寒い。銀さんらしさのある「ラーメンこぼして捨てた」は自然でよかった。


漫画は完結したが、実写化があるおかげでいまだに銀魂が終わった感じがしない。銀魂の作品のイメージから多少話が違っていてもキャラが改変されていてもネタとして受け入れられる。実写を見たのをきっかけに漫画やアニメもまた見てみたいという気持ちが高まった。銀魂ロスをまぎらわせるために実写があってよかったと思う。