職業訓練校の思い出~入学オリエンテーションまで~

無職になり失業保険の手続きのためハローワークに通っていた。3ヶ月は失業手当をもらえることになり、そんなにあせって就職しなくてもいいかと思っていたときのこと。


せっかく無職になって時間があるので、なにか仕事に役立ちそうな勉強でもしようかと考えていた。何の勉強をしようか。自宅から近いところの求人は少ないから、将来的には住む場所に関係なく働ける在宅ワークをしたいなあ。在宅ワークといえばWebシステム開発の仕事は報酬がいいらしい。最近プログラミング流行っているし。そうだ、プログラミングの勉強しよう。


ネット上でプログラミングの勉強ができるサイトを見つけてやってみる。だが従来の怠けぐせからなかなか続かない。無職になってからは好きなだけ朝寝坊して昼ごろに目覚め、気が向いたらふとんから出るという生活をおくっていたので想像以上に勉強は進まなかった。


このままではいけない。今のうちにやっておかないと、就職したら勉強する時間はなかなかとれないだろうし。時間を決めて強制的に勉強させてくれる学校に通うのがベストだが、無職に授業料を払う余裕はない。そういえばハローワークで無職のための学校、職業訓練校があると聞いたような。そこならそんなにお金もかからないだろう。そう思いハローワーク職業訓練校のことを聞きに行った。


ハローワークの窓口に行って職業訓練校に行きたいことを伝えると、さまざまなコースを紹介された。HTMLを使ったホームページ作成を学ぶコースは興味があったが、残念ながら申し込み締め切りが過ぎていた。他によさそうなものはないかと探していると、WordやExcelについて学びITパスポートの資格もとれるコースを見つけた。


ITパスポートはプログラミングの初級資格とも言われているし、WordやExcelも使いこなせるようになりたかったのでいいかもしれない。そのコースを希望することを伝えると書類を渡される。入学願書のようなもので今までの経歴や志望動機などを書く欄がある。それを仕上げてもう一度窓口まで持ってこいと。家からハローワークまで遠いので郵送でもいいかと聞くとだめだと。めんどうくさいな。 


申し込み締め切りまで残り2日だったので、急いで家に帰って書類を仕上げる。志望動機には「希望する職種はまだ決まっていないが、パソコンに関する知識はどんな仕事にでも活かせると思った」みたいなことを書いた。翌日ハローワークまで行って書類をわたすと職員は承りましたといって受け取るだけ。なぜ郵送不可なのか意味がわからない。まあでもこれで申し込みは完了した。


筆記試験と面接は一週間後。なんとかなるだろうと思い、特に対策することなく試験日を迎えた。当日はスーツで早めに試験会場に向かう。会場にたどり着くと机の上に番号が貼られていた。番号といえば申込みをしたときにもらった紙に受付番号が書かれていたがそれのことか。自分の番号は20番で後ろから2番目。申し込んだのはだいぶ後のほうだったことがわかる。


席に座り時間になると用紙が配られた。筆記試験は漢字の読み方やことわざなど国語の問題のよう。( )の中に答えを書いてくださいとある。なのに( )の中には既に文字がある。これはどういうことだ?と混乱していると、試験管が誤って解答用紙を配ってしまいましたと言い全員の用紙を回収する。


ちらっと見ると既に問題を解き始めていた人もいた。どうやらちゃんと問題用紙が配られた人と解答用紙が配られた人が入り混じっていたようだ。別の問題用紙を準備するからと数十分間待たされる。どうやったらそんなミスするんだとツッコミたかったが、素数を数えながら耐えた。


トラブルもあった筆記試験を終えると次は面接だ。面接は受付番号の順に個室で行われる。自分は20番目だったのでかなり待たないといけないかと思っていたら、一人5分ずつぐらいで思ったより早く呼ばれた。ドアの外で待っているときに前の人が必死にアピールする声が聞こえたので、熱意を見せないといけないのかと不安になる。だがもうなるようになるしかない。


少し緊張して部屋に入ると試験管は3人いた。おそらくハローワークの職員と職業訓練校の講師の先生だろう。面接は和やかな雰囲気で前にどんな仕事をしていたか聞かれて答えたくらいであっさり終了する。志望動機すら聞かれなかった。拍子抜けだ。結果は郵送で伝えますと。


公務員試験だと平気で1ヶ月以上待たされるが、職業訓練校の試験結果は1週間後くらいには届いた。就職試験の不合格通知は祈られすぎて神になれそうなくらいもらっているので、封筒を開くときは緊張したが合格の文字を見てほっと一息。学校が始まるのは来週から。


自分の選んだ職業訓練校のコースは、資格の取得を目標とする民間の学校に委託されていた。普通に通えば授業料がかかるところに無料で通えるなんて運がいい。初日はオリエンテーションで提出する書類やコースの内容について説明される。参考書を9冊使って話を聞きながら演習も進めていくスタイルだと。話を聞くだけだと眠ってしまうことが多いので演習もあって安心した。


説明が一通り終わると班を作ってまずは自己紹介。名前と前の仕事について順番に言っていく。前職は保険の営業、ガソリンスタンドの事務、栄養士、セミナーの講師、社会福祉士などバラエティに富んだメンバーだった。男女の比率は1:3くらいで結婚して小さな子どもがいる人も。


自己紹介が終わると30個の質問が書かれた紙が配られそれをネタに話し合う。今一番欲しいものは?という質問に「内定」と答える無職にしかできない自虐ネタをした人がいた。だが内定が欲しいと言えるのは働く意欲がある人だけである。自分はできることなら働きたくない。だからサラリーマンの生涯賃金である二億円が欲しいというのが本音。しかしあまりにも夢がないのでパソコンやスマホを長時間見ても疲れない目がほしいと答えておいた。


100万円もらったらどうする?という質問には、無職という現状から冷静に考えると生活費にあてる以外の選択肢はない。年金や国保の支払い、家賃や食費や通信費などにより100万円は半年ちょっとでなくなる。何もせずただ生きていくだけでも金は必要なのだ。まあ話し合いでは無難に海外旅行に行くと答えておいた。


自分が100万もらったら大学近くのマンションを丸ごと買って学生に貸し出し、大家として悠々自適に暮らすと言った人には感心した。マンションの管理は管理会社に任せるというところも抜け目ない。夢があるのかないのかわからない話だ。


初日はそれが終わると解散、次の日からは本格的に授業だ。授業についてはまたの機会に振り返ってみたいと思う。