じゃがいもを育てて農業の大変さと楽しさを知る

親戚が家庭菜園をしておりその手伝いでじゃがいもを育てることになった。じゃがいもは他の野菜と比べて育てる難易度は低いほうだといわれている。そういえば火星に置き去りにされた宇宙飛行士がじゃがいもを栽培する映画があったな。現実でも環境を整えれば火星でじゃがいもを育てることは可能らしい。そんなじゃがいもを育てるのは楽勝だと思っていた。


まずは土づくりから。クワを振って土を耕し種いもを植えるための溝を作る。できたら植え付け。種いもは切り分けておいて溝に30cmくらいの間隔で置いていく。その横に肥料を1すくいずつおいていき、できたら土を軽くかける。腰をかがめて作業するだけで疲労困憊。スポーツをした時のような清々しい疲れではなく翌日に響くような疲れで筋肉痛にも苦しめられた。


1か月くらい経ってじゃがいもの芽が出てきたら間引きをする。間引きとは芽の数を減らすことだ。間引きをせずそのままにしておくと小さくて質の悪いじゃがいもが大量にできてしまう。せっかく出てきた芽を抜くなんて残酷な気もするが、おいしいじゃがいもを作るためには仕方がないと心を鬼にして丈夫そうな芽だけを残す。


その次は土寄せだ。じゃがいもを植えたラインの間をクワで掘って土を根元に寄せていく。じゃがいもが日光に当たると緑色になって毒が作られてしまうのを防ぐためだ。土寄せは1回で終わりではなく収穫までに何回か行う必要がある。緑になったじゃがいもを食べて食中毒になった例もあるので手を抜けない。


葉や茎が枯れてきたらいよいよ収穫だ。まずはじゃがいもを植えているラインの左右の土をスコップで掘ることから。なぜすぐにじゃがいもがあるラインを掘らないかというと、スコップで傷つけてしまう可能性が高いからだ。傷ついたじゃがいもは見た目が悪いだけでなく腐りやすいため長くもたない。


じゃがいものあるラインを掘る時は普通に掘るのではなく、スコップを垂直に突き立ててじゃがいもの周りの土を持ち上げるようにする。じゃがいもが一つ出てきたらすぐ近くにまとまって埋まっていることが多いので周りを慎重に掘っていく。掘る作業は骨が折れるがじゃがいもの収穫はなかなか楽しい。土の中にじゃがいもを見つけたときは宝物を発見したかのような高揚感がある。


その日は2時間ほどかけてバケツ3つ分のじゃがいもを収穫した。そして採れたてのじゃがいもを蒸してその日のうちに食べた。皮はペロっと剥け、食感はホクホク。採れたてのじゃがいもは今まで食べたどのじゃがいもよりも美味しく感じた。じゃがいもを収穫するまでにはたくさんの苦労があるが、採れたてのものを食べられることは、農業の大きな魅力だと思った。


だが植えてから収穫まで一通りやってみて農業の大変さも身にしみた。上に書いたこと以外にも水やりをしたり、肥料をやったり、じゃがいもの周りに生える雑草を抜いたり、じゃがいもを食べる害虫を殺したり細かい仕事をやっている。単調な繰り返しの仕事が多い上に虫を殺すのは気が滅入る。


また今回はうまくいったが必ずしもじゃがいもがうまく育ってくれるとは限らない。どんなに丁寧に育ててもその年の気候によって収穫量は左右される。自然の力の前には人間はどうしようもないことを実感させられてもめげずにおいしい野菜や果物を作ってくれている農家の人々を尊敬する。


じゃがいもを一通り育ててみて農業に携わる人への感謝の思いが強まった。野菜や果物は食生活を豊かにする。医師が健診で必ず野菜を食べなさいというように健康のためにも欠かせない。厚生労働省は野菜を一日350g食べることを推奨している。だが農業従事者は年々減り続けているし高齢化が進んでいる。


農業人口が減っているのは農業が大変なうえに収入が不安定で生活できないからではないだろうか。日本政府も国民に野菜を食べることを推奨するならもっと農家を守る仕組みを作ってほしい。農業で働く人を守ることが日本国民の健康を守ることにつながるはずだ。1日も早く農家の人たちがもっといい生活がおくるような世の中になることを願う。