タイで初めて値切りを経験した話

大学生の時、異文化学習の一環としてタイに行ったことがある。その時に人生で初めて値切って商品を買うという経験をした。


日本に住んでいると値切ろうと思うことはめったにない。値切りの交渉をする人があまりいないため気恥ずかしいし、一般的な店では値切っても相手にされない可能性が高い。一方タイでは値切るのがあたりまえのこととされている。値切られることを前提に値段がつけられているため、値切らないと損をしてしまうのだ。


観光客相手だと値段をふっかけてくるため、相場より高い金額で買わされることもあるらしい。だがタイは日本に比べて物価が安い。当時は1バーツ=約3円で、30〜40バーツあれば余裕で外食ができる。そのため値切らなくても日本よりはずっと安く買い物をすることができたのだ。だが高いとわかっていて値切らないのもモヤモヤするので、人生経験だと思って値切ることにした。


道の脇にテントが並んでいるようないくつかのマーケットで買い物をした。花の形に彫られた石鹸や、ガラスのシャンデリア、民族衣装など、日本ではあまり見ない商品がたくさんある。タイ語は「こんにちは」と「ありがとう」以外はさっぱりで、英語で数字を言うだけで交渉を行った。大抵は交渉していると店員が電卓を出してきてくれるのでボタンをおして数字を見せればいい。


成功も失敗もしたが、値切ったのはかなり欲しいものばかりだったので結局全て購入した。網目もようのバレエシューズのような靴は100バーツで購入。その靴は100と書かれた紙が貼られたカゴに入っておりワゴンセールのようだった。とりあえず「ディスカウントオーケー?」と聞くと「ノーグッドプライス」とおばさんに笑顔で言われ、苦笑いしながら100バーツで購入。


アジア風のキーホルダーは友人への土産用。一緒にタイに行った同級生も欲しがっていたので、2人でまとめて10個買うことに。同級生が交渉してくれて1個あたり35バーツを30バーツで購入。


木のサイコロは自分用。店主の手造りらしく1つだけ買って値切ると渋い顔をされた。いくらで買ったが忘れてしまったが、5バーツ値切ったのは覚えている。


光沢と伸縮性のあるワンピースも自分用に。一目見て欲しいと思い「ハウマッチ」と聞く。店のおじさんが「350バーツ」「ディスカウントオーケー?」「300バーツ」「275バーツオーケー?」と聞くと眉間に皺をよせた。「285バーツオーケー?」でゆっくり頷いたので、285バーツで購入。


割引率から考えると1番成功した値切りはワンピースだ。だいたい2割くらい。大量に購入したりうまく交渉できたりすると、もっと値切れるのかもしれない。ただコミュ障気味で日本でも店員と会話するのを全力で避けるほどの自分が、値切って買い物したのは貴重な経験だった。


帰国してからジョジョの奇妙な冒険3部のアニメで値切るシーンを見た。ジョセフがオーバーアクション気味にドネル・ケバブ屋の店主と値段交渉するのは楽しそうだった。値切るのはコミュニケ―ションなので、思い通りにいかなくても楽しめればそれでいいのだ。


またタイに行く機会があったら今度は交渉を楽しんで値切ってみたい。ジョジョのアニメは大げさすぎると思うが、半額くらいの値段をいって相手の反応を見るのもいいかもしれない。その時に備えてコミュ力と演技力を向上させておこうと思う。