ある夏の日の思い出

ある夏の暑い日に水泳の全国大会を見に行った。天気のいいよく晴れた日だった。

 

試合会場に到着すると、かなり多くの人が来ていることに驚く。競泳がかなりの人気競技であることをその時知った。会場に入ろうとすると整理券が必要ですという看板が。整理券が配布される場所に向かうと、もうすでに整理券の配布は終わっており会場には入れないことがわかる。

 

残念だがあきらめるしかない。未練がましく会場の周りを少しぶらぶらしていると、試合の様子が映し出されているモニターを見つけた。せっかく来たので少し試合を見て行こう。そう思って後ろの方の椅子に座ってモニターを見ていると、すっと隣に誰かがくる。「今日は試合を見にきたんですか」

 

弾むような声が聞こえてそちらを見ると同年代くらいの女の子が座っていた。見知らぬおばさんに話しかけられることはよくあるが、同い年くらいの子に話しかけられるなんて珍しい。かわいい女の子に話しかけられたことを内心嬉しく思いながら警戒心を持つことなく質問に答える。

 

「そう、今日初めて競泳の試合を見に来たんだけどこんなに人が多いとは思わなかった。」「私も今日初めてで競泳の人気にびっくりしました。」「自分は少し水泳をかじってて興味があったんだけど君は?」「私は水泳の経験はないけれどスポーツ観戦が好きで。」「全国レベルでは自分が50メートル泳げる速さで100メートル以上泳ぐ人がいるからびっくり。」

 

そんな感じで水泳関連の話をしばらく続けた。そのうちに仕事の話にもなり、カフェや接客業の苦労話でいい感じに盛り上がる。そのうちに帰る予定の電車の時間が迫ってきて、そろそろ帰らないといけないと伝えると「ちょっと待って」と白い一枚のカードが彼女から手渡された。

 

時間があまりなかったので、カードを確認することなく「ありがとう」とだけ伝えて笑顔で別れる。早歩きでは間に合わなそうなので走って駅へ。ぎりぎりで間に合い座って一息つく。そういえばさっきもらったカードはなんだろう、連絡先かカフェの名刺でもくれたのかな。そう思いながらカードを見るとそこにはエホバの証人と書かれていた。