何食べたい?どこ行きたい?と聞かれるストレス

何食べたい?どこ行きたい?人からこの言葉を聞くとイライラすることがある。これは選択の自由を与えられているのと同時に決断することを迫られているからだ。別にはっきり答えを出さず、特にないとか思いつかないとか答えてもいいのだが、なにか答えを出さないといけないと思うとしんどくなる。あまり考えずにあっさり答えられる時もあるのだが。

 

ある研究結果によると人間は1日に9000〜3万5000回の決断をしているらしい。朝何を食べるか、どんな服を着るか、どの言葉を使って話すかなど。普通に日常生活をおくるだけでしょっちゅう決断している。これじゃあ決断疲れをするのも当然だ。

 

医師の仕事でしんどいのは多くの決断を求められることだと聞いたことがある。学生時代、きつい実習のせいで精神的にしんどかった時に飲食店で注文するものを決めるのがとてもつらかった経験がある。決断するのにはエネルギーが必要で、決断を求められたときにイライラしたりしんどかったりする時は疲れているということなのだろう。

 

夫婦で夕食のメニューを決める時にも決断疲れからくる問題は起こっている。ある家庭で妻が何食べたい?と聞き、夫がなんでもいいと返す。妻はなんでもいいと言われても困ると思いながら仕方なく料理本で適当に開いたページにあったカレーを作る。するとそれを見て夫がカレーじゃないものが食べたかったとい言う。こうなると妻の怒りは爆発する。何でもいいと言っておきながら文句を言うなんて。こっちは毎日夕食のメニューで悩んでいるのに。夫はなんでもいいと言ったがカレーは気分じゃないと文句を言う。

 

こんな夫婦ケンカはおそらくどこの家庭でもよく起きているんじゃないかと思う。夕食の時間は特に1日の疲れがたまっている時間帯だ。1日家事や仕事をしてエネルギーを消費しているため、妻も夫も決断するエネルギーがあまり残っていない。そこで何食べたい?という言葉からこのようなケンカが起こってしまうのだ。

 

決断疲れによるケンカを防ぐためには選択肢を少なくすることだ。アップルの創始者ティージョブズは黒のタートルネックジーパン、アメリカの元大統領バラク・オバマはグレーか青のスーツしか着ないそうだ。このように毎日することの選択肢を少なくすると決断疲れを防ぐことができる。

 

夕食のケンカも選択肢を少なくしていれば防げたかもしれない。例えばあらかじめ妻が1週間のメニューを決めておく。ハンバーグ、カレー、焼き魚、煮物、グラタンというように。そしてその中から夫に何が食べたいかを選ばせるのだ。こうすれば今回のようなケンカは起こらない。ただずっと同じメニューでは栄養が偏ってしまうという問題がある。どちらか一方だけがメニューを考え食事を作るというのも負担が偏ってよくない。夫婦で交代しながらメニューと食事作りをしたほうが栄養面でも夫婦仲の面でもいいだろう。

 

なんでも選択できる自由があるというのはいいことのように思えるが、そうとは限らない。例えば一から旅行の計画を立てるなら、交通手段はどうするか、観光地はどこを回るか、どのホテルに泊まるかなど決めなければならないことがとても多い。これが面倒になって旅行をあきらめることもある。最近は行くかどうかだけ決めればよいバスツアーのほうに魅力を感じることが多い。

 

スーパーで24種類と6種類のジャムを売ったときに、24種類のほうが集客は多かったが6種類のほうが購入率は高かったという実験がある。メニューの多すぎる飲食店は流行らないとも言われている。なんでも自由に選べるより、ある程度限られた選択肢の中から選べる環境のほうがストレスは少なくなるのかもしれないと思った。