IT(イット)1990年テレビ版と2017年リメイク版の違い

2017年公開の映画IT(イット)を見て、ジョージーとペニーワイズのやり取りが自分の知っているものと違う…と思い調べてみると、2017年のITはリメイク版であることを知った。

 

ITの原作はスティーブン・キングの小説で、1990年にも映像化されている。その時はテレビ放送用として、およそ前半1時間30分+後半1時間30分(計187分)で構成された。前半では主に子ども時代、後半は大人になって町に戻ってきた彼らが描かれる。

 

1990年版ITの前半では大人になったルーザーズのメンバーが町に残ったマイクからの電話を受けて、子ども時代を順番に回想していく。2017年版ITはこの子ども時代の話だけを抜き出して膨らませ、2時間ほど(135分)の映画にしている。大人になってからの話はIT-TheEndで映像化するそうだ。

 

1990年版ITと2017年版ITは原作は同じものの話の構成が全く違うし、演出や俳優も違っている。特に大きく印象が違ったのがペニーワイズだ。メイクや衣装、俳優の演技などかなり違いがある。

 

ITの有名なシーンに排水口でのジョージーとペニーワイズのやり取りがある。1990年版のペニーワイズは顔がはっきり見えており笑顔が多いが、考えたり怒ったりする顔もあり表情豊かだ。ジョージーも警戒はしているもののあまり怖がっているようには見えない。「君と僕はもう知り合いだろう。」に対して「そうだね、じゃあさよなら」と立ち去ろうとする余裕もある。結局ボートとその他の誘惑に負けて手を伸ばしてしまったが。

 

2017年版の排水口の中のペニーワイズは顔が下半分しかはっきり見えておらず、終始笑顔である。登場シーンでは目が光って見えたこともあり、ジョージーは会話の中で笑うことはあるものの、ずっと怖がっているように見えた。ボートに手を伸ばしたのもビルとの約束があるから仕方なくという感じだった。

 

ジョージーとのやり取りに注目すると、1990年版ペニーワイズは普通の人間に近く、2017年版は見るからに化け物という印象。まあどちらもありえない所から出てきたり、大人には見えなかったりするので化け物には変わりないのだが。1990年版の排水口のシーンだけを昔見た時に、ITを知らなかった自分はペニーワイズをずっと悪霊化したドナルド・マクドナルドだと思っていた。

 

ペニーワイズとジョージーのやり取りはネット上でMADがたくさん作られている。その中で特におもしろいのが偽字幕のペニーワイズがおすすめするシリーズだ。ペニーワイズがマイナーなゲームや映画を紹介し、興味のなさそうなジョージーを説得して沼に引きずり込むという内容。ジョージーが立ち去ろうとするシーンやペニーワイズが引き留めようとする映像が字幕とよく合っているものほど笑える。

 

少し話がそれてしまったがペニーワイズにはかなりの違いがある。1990年版のペニーワイズは普通の人間のように子どもたちによく話しかける。そしてアイテムを使って怖がらせてくる。シャワーを動かしたり、血を飛び散らせたり。しかしペニーワイズ自らが襲ってくることはなく怖がる様子を見て笑っているだけだった。気がついたらそばにいるというのが怖い。最終決戦では酸と銀の弾を受けダメージを負ってあっさり逃げるが、また復活しそうな様子だった。

 

2017年版のペニーワイズ自らがよく動き、あまりしゃべることなくいきなり飛び掛かってくることが多かった。水の中から浮かんできたり、棺桶から飛び出してきたり、小さい冷蔵庫から出てきてつかみかかってきたり、ステージからジャンプして捕まえにきたり。なんとなく怖いというよりびっくりする怖さ。最終決戦では子どもたちにバットや鎖などで物理的にボコボコにされる。化け物を力を合わせて倒したという感じの爽快感があった。

 

他はべバリーの活躍と設定とBGMが違う。べバリーは1990年版ではルーザーズNo.1のパチンコの名手で、最終決戦でその能力を活かして銀の弾を撃ち込む。そのためペニーワイズのダメージの9割はべバリーの攻撃によるものだった。2017年版のべバリーは度胸があり、最終決戦では鉄の棒で串刺しにする。ペニーワイズにかなり大きなダメージを与えているが、他の子どもたちも攻撃していたので、みんなで倒したという印象が強かった。

 

設定はデリーで大きな事件が起こるのが30年ごとか27年ごとかが違っていた。30年の方が切りがいいが、27年だと12歳の子どもたちが大人になった時に30代で集まれるし微妙な数字に気味の悪さも感じられる。

 

BGMによる全体的な雰囲気の違いもあった。1990年版は静かめの暗いBGMばかりで大きな変化はない。例えるならデコボコの長い道を走り続けているイメージ。ちなみにジョージーの母が奏でる不穏なBGMは「エリーゼのために」だった。2017年版は怖いシーンでは不安を煽るBGM、子どもたちが川遊びをしたり、血で染まったバスルームを掃除したり、いじめっ子と石の投げ合いをするシーンは思いっきりノリのいいBGMと変化が激しい。例えるならジェットコースターに乗っているイメージ。

 

1990年版と2017年版には27年の差がある。その間に映像技術や演出方法は大きく進化しているが、古いものにも新しいものに負けないよさがあった。また古い映画も見ていきたいと思う。