竜とそばかすの姫を映画館に見に行った感想

竜とそばかすの姫を映画館に見に行ってきた。見終わったときの感想としては思っていたよりよかった。予告PVをみて映像はまあまあきれいだがストーリーは微妙な気がすると思っていたが、結果どちらも自分の予想を超えてよかった。


細田守監督の作品の中ではサマーウォーズ時をかける少女の次に好きで、映画館で見てよかったと思える作品としては1番だった。やっぱり大画面で見る映像美と歌っていい。2時間を超える映画だったが、気がついたらエンドロールになっており長いとは感じなかった。


世界やその他大勢を救う話ではなく、たった一人の虐待されている男の子を助けるという話なのもよかった。見知らぬ子どもを助けて亡くなった母親の気持ちがわからなかったスズが、自分も見知らぬ子どもを助けることで母親の気持ちに気づいたシーンはちょっと感動した。素顔をさらすことで自分を危険にさらしてでも助けるところは母親の思いを受け継いでいるようだった。


ベルがクジラに乗って歌い花がブワッと舞い広がるシーン、高知県四万十川沈下橋などの背景、素顔で歌うスズをみる人たちの光が増えていくシーンはよかった。


ストーリーについてはちょこちょこツッコミどころがある。回想でスズの母が中州に取り残された子どもを助けに行くシーンで周りに多くの大人がいた。彼らが救命胴衣をつけた母をロープで流されないように引っ張るとかできたのではないか。


スズが虐待されている子どもを助けに行くと言ったときに一人で行くと言ったとしても誰かついていくべきだと思った。せめて幼馴染だけでも。幼馴染がスズに顔出しするように言っただけで自分はなにもしない無責任なやつに見える。そのせいでスズがこいつに惚れる説得力もない。


そもそも高知から東京まで助けに行くというのも微妙である。バス移動してたら10時間以上かかるので、一刻を争うという状況なら間に合わない。保護されてからスズが会いに行って元気づけるというのでもよかったのではないか。


インターネットを肯定的に描くのなら、虐待の動画をインターネットに上げることでスズの歌を聞いていたみんなから情報を集めて場所を特定し、近所の人たちに助けてもらうという流れでもよかったと思う。実際にインターネット上に投稿された男の子の虐待動画が拡散して役所や児童相談所への通報が相次いだことで親が逮捕されたというニュースもあるんだから。


連絡したときに48時間経たないと助けられない?みたいなのは違和感だった。児童相談所は連絡を受けたら48時間以内に対象者と接触することを目標としており1割くらいはできていないというデータがあったが、明らかに緊急性が高ければすぐに動くはずである。


子どもを助けるため一人で飛び込んだ母親をインターネット上で否定する人々が1番胸くそ悪かった。だから物語の中でなにもせずに他人を否定することは間違っているとはっきり示してほしかった。一人で助けて死んでしまった母親との対比で、みんなの協力によってスズも傷つくことなく助けることができたという結末のほうがいい気がする。


あと虐待を受けていた兄弟がなぜ今まで助けられなかったのかよくわからなかった。インターネット上で助けを求めたのなら警察や児童相談所に通報してくれた人はいたと思う。それでも解決してないなら考えられるのは、虐待父が一人二人の証言なら握り潰せるほどの権力を持っていることくらい。もし虐待父がジャスティンだったらとか想像するしかない。


などいろいろ書いてしまったが、不満があったのはほぼ最後のほうだけで全体的にはよかった。虐待問題をどうすればよいか、改めて考えるきっかけにもなった。見終わった後に文句をつけるところがなくおもしろかった、感動したと思えるものが名作なのかもしれないが、いろいろ意見を言いたくなるのもいい作品だと思う。