蚊がいなくても寂しくはない

今年もそろそろ蚊の季節がやってくる、ということで三千円ほどの予算をかけて蚊取りマシンを導入した。薬を使わずに光や二酸化炭素や風で蚊を誘い出して閉じ込めるタイプのものだ。コンセントに挿せば動く。


自由に飛びまわる蚊をこれで捕まえられるのか、かなり疑いの目をむけながら部屋に設置してみる。夜になると青い光が目立つ。虫は光に集まると聞いたことあるから、これならいけるかもしれない。


はやく蚊取りマシンの力が見たい。そう思って蚊を心待ちにしていのたが、そういうときに限って奴は姿を見せない。今までは見たくなくても目に入ってきてたのに。あ、これは例えで実際に目に入ってくるのは小バエみたいな虫だが。


マシンを設置して2週間、一匹も捕獲なし。急にどうしてしまったんだ。まさか気候変動の影響で蚊が絶滅してしまったのかと心配になってくる。そういえば暑すぎると蚊は活動しないと聞いたことがある。だが今年はまだそこまで暑くなっていない。


いたら夜も安心して眠れなくなるストレスの原因なのだが、いなかったらいなかったで不安になる。いつもいたやつが急に姿を見せなくなると少し寂しい。


と思っていたら深夜2時に顔と手首がかゆくて起きる。電気をつけると蚊だった。なんだいたのか。ちょっと安心するものの、蚊が部屋の中を飛び回っている状況では安心して眠れるわけがない。


前言撤回、寂しくなんてない。すぐに殺虫スプレーをふりかける。初めの攻撃は避けられるが、扇風機の上に乗ったところでトドメをさした。やっとこれで安心して眠れる。そこから朝までは熟睡だった。


翌朝気になって蚊取りマシンの中を見ると、一匹捕獲されていた。欲をいえば昨夜自分を刺したやつも殺ってほしかったが、初めての成果を見て晴れ晴れとした気持ちになった。


蚊がいなくてちょっと寂しい気がしたが、あれは気の迷いだった。蚊はいないほうが安心して夜も眠れる。やっぱり蚊がいなくても全く寂しくはない。