結婚とはお金を共有する契約

結婚というと何を思い浮かべるだろうか。戦国時代なら家と家を結びつけるものであり、現代なら愛し合う2人が最終的に行きつくものというイメージがある。自分は結婚とはパートナーとお金を共有する契約だと考えている。


なぜなら、法律や制度で結婚したものどうしはお互いに助け合うものとされているからだ。現実問題、そうでない夫婦もいるが民法で夫婦はお互いに生活費を出し合って同じ水準で生活するべきとされている。


国民の最低限度の文化的な生活を守ってくれるはずの生活保護は、同じ世帯で収入の多い人がいる場合は受けられない。そのため基本的に結婚している一方の収入と貯金がなくなり、生活できなくなった場合はもう一方が支えなくてはならない。


その代わりに結婚相手を経済的に支えている人は、住民税や所得税が減額されることがある。配偶者控除がそれだ。配偶者とは婚姻届を提出して戸籍上の婚姻関係になった人のこと、控除とは一定の金額を差し引くこと。配偶者控除は収入の少ない方の年収が103万円以下で、収入の多い方の年収が1000万円以下なら適用される。婚姻届を提出していない事実婚では使えない。


また収入の多い方が年金や健康保険料を支払っていれば、収入の少ない方は支払う必要がなくなることがある。第3号被保険者というのがそれだ。収入の多い方が厚生年金か共済組合に加入している第2号被保険者で、収入の少ない方の年収が130万円未満なら適用される。つまり収入の多い方がサラリーマンか公務員なら使えるということだ。


ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」のような事実婚の場合は住民税や所得税は減額されないが、平匡はサラリーマンなのでみくりが年金や健康保険料を支払う必要はなくなる。まあ平匡がみくりに家事労働の報酬として毎月19万4千円払っているのを収入とみなすなら、昇給・ボーナスなしでも年収232万8千円なので第3号被保険者にあてはまらず、年金も健康保険料も支払わなければならないのだが。


普通のサラリーマンなら給料から厚生年金、健康保険料、所得税、住民税、雇用保険料などが引かれるところだが、ドラマでは折半した生活費しか引かれている様子はない。雇用関係といいながらもみくりへの収入はおこづかいのような扱いなのだろう。ちなみに19万4千円から生活費(家賃15万、光熱費2万5千円、食費3万)の半分である10万2500円を引くと、9万1500円となり年収は109万8000円となる。結婚した間柄なら生活費や教育費の受け渡しは贈与にならず、1年に110 万円までなら贈与税はかからないので税務署にばれても問題はない気がする。


ドラマでみくりは婚姻届を出して結婚し、自分への報酬を貯蓄にまわすという平匡の提案にもやもやしていたが、民法では結婚している間に2人が手に入れた不動産や貯金は共有財産として扱われる。専業主婦(夫)でも相手が仕事をするのに貢献したとみなされるため、離婚するときは2分の1を請求できる。それに戸籍上の夫婦であれば遺言状を書いていなくても、一方が亡くなった時にもう一方が財産の2分の1を受け取る権利がある。とはいっても絶対ではないので、みくりが自分の財産が減らされるという提案を簡単に受け入れられない気持ちはわかるが。


パートナーが共同経営責任者だというのはいい例えだと思う。結婚した2人は家庭をよりよくするという目的のために、お金を出し合ったり助け合ったりして生活していくからだ。子育てをすることは家庭が子どもに投資することなので、教育費にどれだけお金をかけるかなどで言い争うこともあるだろう。企業でもどの事業に出資するかでもめたりするので似たようなものだ。


このように結婚するとお金をあげたりもらったりしやすくなる代わりに、いざというときには相手を支えなければならなくなる。一緒に生活するとなると共同で使う家具や家電などが増えるので、どこまで自分の財産かわかりにくい。共有のものを買うときには2人で話し合い、生活のために協力して貯金していく必要がある。


子育てをするかどうかに関係なく、結婚したらお金が自分だけのものではなく家庭のものになることは確かである。だからこの相手になら投資してもいいと思える人と結婚するのがよいだろうと思う。