子育てとは未来に投資すること

戦国時代の武家なら子どもを育ててることが使命のようなものだった。男子は家の跡継ぎに。女子は嫁がせて他の家との結びつきを強めるために。時代劇を見ていると、お腹に子がいることを妻から聞いた夫がでかしたと言って大喜びするシーンがあったりする。


武士だけでなく農民でも子どもは働き手になって家を支えてくれる大切な存在だった。現代は子どもを働かせるのはかわいそうだというイメージがある。現代でもある程度の年齢になったら就職する人は多いが、多くの人は自分の生活のために働く。働いていても実家ぐらしで生活費を親に頼りきっている社会人もおり、自分はその一人だったりする。


そんなだから現代では子どもを育てることが家のためになることはあまりない。伝統ある店を次世代に残していく必要のある一族とかなら別かもしれないが。一般的なサラリーマン家庭なら家のために子育てをしようという意識はない。周りの人たちが子育てをしているから自分たちもという感じである。


だが最近はそんな人も少なくなってきた。結婚しても子どもは持たないという生き方が尊重されるようになってきたからだ。それはいいのだが、それと同時に子どもを育てるという選択をした人が責められやすくもなってしまった。親の収入が少なかったら子どもがかわいそうとか。


なんでもかんでも子どもががかわいそうともっともらしいことを言って親を責める奴にはイライラするのだが、子育てにお金がかかるのも事実。子どもを一人育てるのに3000万円かかるといわれている。子育ての何にそんなにお金がかかるのか。答えは生活費と教育費である。


生活費は年齢が上がってもあまり変わらないが、教育費は年齢が上がると急に高くなっていく。そんな教育費のほとんどを持っていくのが大学である。国公立大学に入ったとしても、入学金で30万、1年に54万円超かかり4年で250万ほど。それに教科書代や実習費用が上乗せされる。


さらに大学は田舎の県には少ないため一人暮らしする必要がある人は生活費もかなり持っていかれる。節約して1ヶ月7万円におさめたとしても1年で84万円、4年では336万円。教育費と合わせて軽めに見積もっても600万円ほどは持っていかれる。


政府は高校生までの教育費を無償化するとか言ってるが、問題なのは大学の教育費なのでそっちをなんとかしてほしい。大学に入らなくても高卒で働けばいいじゃないと思うかもしれないが、現状では学歴で生涯年収が変わってくるというデータがある。まあ大企業に就職した高卒のほうが、中小企業で働く大卒より年収が高いというデータもあるが。


大卒のほうが年収が高いのなら子どもを幸せにするためには親が大学の学費を出してあげるべきなのかもしれない。だが親が無理して子どもを大学に行かせようとして足りないぶんを奨学金でまかなうと、社会人になってから奨学金を返済しなければならなくなり、かえって将来的に子どもの負担になるということもある。


自分は子どもを育てるなら大学に行かせてあげたいと思っているが、それは自分が親に大学に行かせてもらった恩返し的な理由からである。自分が高卒だったら子どもを大学に行かせようとは思わないだろう。そもそも大学に行く意味ってあるのかと思うこともあるがそれはまた別の機会に書くことにする。


話を元に戻そう。子ども1人を育てるにはマイホームを持てるくらいのお金がかかる。それに加えて子どもを育てるには自分の労働力をつぎ込む必要がある。食事を作ったり服を着替えさせたり。特に赤ちゃんの時は24時間気を抜けず、夜もまともに寝られない。ある程度大きくなっても小学生くらいまでは子どもを一人で家に残して外出することはできない。


途中で子育てをやめたくなったからといって放り出せば育児放棄(ネグレクト)で逮捕される。だから一度子育てを始めてしまったら子どもが自立するまでやめられない。その期間は子どものために自分のお金+労働力を捧げ続けることになる。


それでいて子育てをすることによる家や個人への見返りはほとんど求められない。だから自分のことだけを考えた場合、子育てをすることはマイナスになるように思える。だが国全体で考えた場合はプラスになるのではないだろうか。


時代劇で殿様が「子どもは国の宝だ」と言ったりするが、現代日本でもそうではないかと思う。子ども一人育てるのに3000万円かかるとはいっても、人一人の生涯収入は平均2億円でその3割の6000万円を税金・社会保険料で回収できる。長い目で見れば約2倍のリターンが期待できる気がするのだが。


国はもっと子育て支援にお金をかけていいと思う。個人ができることには限界がある。給料は下がり社会保険料は上がるため、子どもに十分なお金と労働力を提供できる若い人はどんどん少なくなっている。お金がないのに子どもが欲しいという人は批判される。批判されなくても将来が不安で子どもを作らないという選択をする人も増えている。


このままではますます少子化が進むだろう。今のままでは自分のお金や時間に余裕があってそれを捧げることができる、かつ子どもを育てる強い意志がある限られた人しか子育てができない。子育ては一人ではできないので周囲のサポートも必要だ。


個人でどうにもならないことは国でサポートできるようにしていったらいいと思う。お金だけじゃなくて、親が子育てを休憩できるようなサービスもあればいい。長い目で見れば子育てを支援することは未来に投資することだ。自分の今の幸せだけではなく、みんなの未来の幸せも願える人が増えていけばいいと思う。