食べたい時に食べたいものを食べられる不幸

最近はおいしい食べ物が簡単に手に入るため、感動がないと文句を言ってみる。自分が小学生の時は誕生日と、クリスマスに食べるケーキをとても楽しみにしていた。今のようにコンビニやスーパーでおいしいケーキが売っていることもなく、ケーキ屋に行って選ぶのが楽しみだった。ガラスケースに張り付いて何十分もかけてケーキを選んだり、兄弟より少しでも多くのクリスマスケーキを食べようと争ったりしたのもいい思い出だ。最近は食べたいと思った時にすぐにケーキを買って食べてしまうので、誕生日やクリスマスにケーキを食べる習慣はなくなった。


いつでも食べたい時においしいケーキが食べられるようになったことは、はたして幸せなことなのだろうか。戦争やホームレスなど、食事さえ満足にできない時代を経験した人に聞くと、食べたい時に食べたい物を食べられることは幸せなことだと言うだろう。しかし食べたい時に食べたいものを食べられることは、食べたいものを楽しみに待つ時間を奪うことでもある。楽しみに待った後に食べるケーキは、普通に食べるケーキの何倍も美味しかった気がする。スーパーやコンビニで、簡単においしいケーキが買えるようになったことで、その感動を奪われてしまったことは不幸といえるのではないだろうか。