『リング』を見て本当に怖いのは貞子ではなく人間だと思った

深夜に再放送していた『リング』を、録画して昼間に見た。貞子がテレビから這い出てくる例の有名なシーンだけは知っていたが、映画全体を通しで見たのは初めてだった。

 

まず「呪いのビデオテープ」の設定が怖い。それを見たというだけで1週間後に呪い殺されるなんて理不尽すぎる。よく比較される『呪怨』も、その家に一歩足を踏み入れただけで呪われるという理不尽さが特徴だときく。本当に呪われるべきなのは、貞子を井戸に落とした父親なのであって、ビデオテープを見た人たちは、ただのとばっちりである。

 

テープの映像には謎の女性や呪術師、新聞記事が写っており幽霊やお化けが出てくるわけではないのだが、なんともいえない不気味さを感じる。主人公の玲子は呪いを解くためとはいえ、よく何度もじっくり見ることができたなと思った。

 

貞子は最後の例のシーンに出てくるだけで、そこまで姿を現すことはない。貞子を映像で見せることなく脅威であることを示す演出がなんともいえない怖さをかもしだしていた。映画の冒頭が夜の海だったり、恐怖の表情で亡くなったり、呪いを受けた人は写真に顔が歪んで写ったり。

 

雰囲気に昭和を感じるが、『リング』は1998年と平成生まれの作品である。最近はDVDが主流になりビデオテープをほとんど見ることがなくなったので現実に近いという恐怖を感じることはなかったが、普通に使っていたらタイトルのないビデオテープを見るだけで恐怖を思い出しただろう。

 

玲子の元夫で超能力者である高山竜司が貞子の呪いの犠牲になるシーンが例の有名なシーンだった。例のシーンを見たときは、「あ、これ進研ゼミで見たやつだ」現象でちょっとわくわくしてしまった。井戸から出てきた貞子が近づいてきて、テレビから出てくるという発想をした人はすごい。

 

貞子は念じるだけで人を殺せる恐るべき超能力を持った上に、怨霊となって呪いのビデオを生み出す能力も持つなんて、よい方向に使えば世界平和に役立てられるのではないかとも思った。貞子よりも貞子を恐れて井戸へ落とす父親や、息子を守るために父親を犠牲にしようとする玲子が怖い。

 

個人的に一番怖かったのは玲子と竜司が必死に井戸の中の貞子の遺体を探すシーンだ。日が暮れていくなか暗い井戸の中に入って水を汲みだすという状況が怖い。もし井戸の外にいる方が動けなくなったら上がれないし、周囲に人気がないので助けも期待できない。そのうちに水の中から長い髪の毛が浮かびあがってきて、玲子が貞子の頭蓋骨を抱きしめたところは怖いというより感動的だった。これで呪いが解けていたら、すっきりしたラストだったのに。

 

『リング』を見てホラーって怖いけどおもしろいと思った。今までホラーというだけで毛嫌いして見ていなかったが、他のホラーにも興味がわいてきた。また気持ちに余裕のある時に少しずつ見てみようと思う。