コロナウイルス関係なく死を意識した話

日曜日の朝、一階から急に名前を大声で呼ばれて飛び起きる。日曜日は朝寝坊がスタンダードなのに朝からなんなんだと思いながら階段を降りていくと「じいちゃんが息してない」という声が。ねぼけていた頭がぱっと覚醒しあわててじいちゃんのベッドに向かう。名前を呼びながら頬を軽くたたき呼吸してないとわかるとすぐに心臓マッサージを行う。圧迫する場所は乳頭を結んだ線上で体の真ん中。押していると口から息が漏れる音が聞こえた。本当は柔らかいベッドより硬い床の上でやった方が効果的なんだけど一人で動かすのは難しいよな。そんなふうに妙に冷静に考えながらマッサージしている自分がいた。数分後、ばあちゃんが呼んだ救急車が来る。さすが早い。昨日の夜まではよくしゃべっていたのに、朝方急に呼吸が止まったことを伝える。救急隊員が心臓マッサージを引き継いでくれる。AEDも行うとゆっくり胸が上下し始めた。そのまま担架にのせられて病院に運ばれる。


病院に運ばれたじいちゃんはHCUに入れられた。呼吸と心臓は戻ってきたが、まだ意識は戻らない。医師からきいた話では手足を動かしたため薬で眠らせている、3日くらい見てみないとわからないと。検査の結果、心筋梗塞だったことがわかった。じいちゃんは今まで心臓の病気にかかったことはないし、持病もなかったのでびっくりした。高齢なのでそれなりに血管が弱っていたのかもしれない。最近、ニュースではコロナウイルスのことばっかりで命の危険があるならそっちだろうと思っていたので全く予想してなかった。心臓が止まった場合、脳が障害を受ける可能性が高く、生きていても記憶がなくなったり人格が変わったりしてしまう可能性がある。昨日の夜までは普通に動いてしゃべっていたじいちゃんは、朝見たとき呼吸をしてないこと以外はただ眠っているかのように見えた。自分でも気づかないうちに眠るように亡くなるなら苦しむこともないし、それも幸せかもしれないとも思った。だがまだいなくなるとは思っていなかったので声が聞けるならやっぱり生きていてほしいとも思う。生きて寝たきりになることから亡くなってしまった後のことまでいろいろ考えてその日はよく眠れなったのが、次の日病院に行くと普通に起き上がって話していたのでほっとした。


世間ではコロナウイルスの話題ばかりだが、人間いつ心臓が止まるかは誰にもわからない。眠っているあいだも含めて365日24時間心臓が動き続けていることだって奇跡的なことだ。持病もなく若くて健診結果がオールAの健康な人が、ある日突然倒れて帰らぬ人となってしまうことだってある。コロナの影響でライブやスポーツジムや旅行に行けなくなったり、病院の見舞いを制限されたり、なにかと閉塞感のあるこのごろであるが、もし明日目覚めなくても後悔しない生き方をしたいと思った。