個人情報を大切にしすぎる社会は面倒くさい

個人情報保護法が2005年に施行された。それがきっかけかどうかはわからないが、個人情報についていろいろ言われることが増えてきた。それとともに昔と今で変わってきたことかある。


昔は芸能人の住所や連絡先が雑誌に載っていたらしいが今はなくなった。代わりに芸能人の名前をインターネットで検索するとプロフィールや芸歴などが簡単にわかる。


ハローページに個人の電話番号を載せる人が少なくなり、申し込みした人だけに配布されるように。2021年10月以降に発行・配布する最終版をもってハローページの終了が決まった。


人が亡くなっても新聞に掲載されることが少なくなってきた。最近は葬式に家族以外を呼ぶことも少なくなっているため、近所の人が気づかないうちに亡くなっていたということがある。


学校の連絡網がLINEやメールの一斉送信になった。LINEやメールなら相手の不在に関係なく連絡ができるし、リレーのように電話をつないでいくよりも早く簡単に情報共有できるのがいい。


表札を出さない家が増えた。表札を出している人で賃貸は25%、持ち家は77%。持ち家は郵便の誤配達を防ぐために名字だけ出している人が多いらしい。


スポーツジムの受付で知り合いが今ジムに来ているかどうかを聞いたら、個人情報ですからと教えてくれない。ちなみに聞いた人もそのジムの会員である。


自分の健康診断の結果を電話では教えてくれない。電話では本人確認ができないからと。自分の健診結果の画像を見るためにはかなり面倒な手続きをしなければならず、費用もかかる。


など


個人情報を守るために、誰でも見られるところで個人情報をオープンにすることは少なくなってきた。ネットでも実名を使ったり顔出しをすることはリスクがあると言われている。自分も不必要な個人情報は出さないように気をつけて生活している。しかしGoogleなどのアプリには気がついたら検索履歴や位置情報を集められている。


インターネットで買い物をしたり、チケットをとったり、転職活動をしたりとサイトを利用するときには名前、住所、電話番号、メールアドレスなどを必ず登録する。まあ配達されたものを受け取ったり連絡を受けたりするために必要なので仕方ない場合もあるが、これいる?というような情報を求められることもある。あまりいい気はしない。


特に官公庁は個人情報を集めまくりである。名前、住所、電話番号はもちろん世帯構成、収入、健康保険の種類、年金の支払額など。福祉課や健康課は実家の場所、結婚相手の職業、子どもの入園先、食生活などの情報を集めることも。それらの情報は行政サービスを提供したり税金を集めるのに使われることになっているが、ちゃんと利用されているのか怪しいところもある。


例えば国勢調査で勤務先の会社名を書かせる理由がわからない。業種や職種を書くのならわかるがなぜ会社名?会社名からはどんな会社でどんな仕事をしているかわからないと思うのだが。わざわざ会社名を一つ一つネット検索して調べているとも思えないし、ホームページのない会社もある。これがブラック企業摘発のための調査ならわかるが。


企業や官公庁がネット上で個人情報を取り扱うことが増えたせいか、しばしば個人情報流出がニュースになる。通信教育の大手会社が住所や電話番号を流出させたお詫びに500円の図書カードを送ってきたとか、婚活サイトの会社が免許証の画像を流出させたとか。謝って済む問題ではない。派遣社員が金のために個人情報を売ったっていうのがひどいし、免許証の画像をなぜ10年も保存しているのか。個人情報を集めるのはいいがちゃんと管理してほしい。


個人情報保護法は個人情報を守りながら有効活用することを目的としている。そもそも個人情報とは特定の個人を識別できる情報のことである。年齢や性別や持病など単体ではできなくても、組み合わせることで特定できるものも個人情報だと学んだ。


だがこれなら個人がわかっている状況でその人が今どこにいるかとか年収はいくらかとか口座情報とかクレジットカードの番号は個人情報にならない。クレジットカード番号だけが流出しても第三者に勝手にネットでの買い物に使われる可能性があるのに。


よく似たものでプライバシーという言葉がある。プライバシーは個人の隠しておきたい私的な情報を守る権利のこと。結婚しているどうかや子どもの人数、性生活などがそれにあたる。個人的には勤め先や職業もプライバシーだと思う。


このプライバシーと個人情報がごっちゃになっているところがある気がする。自分が知られたくないことを個人情報だと言ってみたり。まあ私的なことも個人の情報には違いないのだが。


個人情報を自分から人に伝えるのはよくても、他人が断りなく自分の情報を伝えていると嫌な気持ちになることがある。気持ちの問題だけでなく、それによって陰口を言われたり変な噂を広められたりと不利益になることもある。


法律に関わらず、個人の情報を大切にするということがこれからの社会には求められるだろう。しかしそれによって生活が不便になるのはよくない。個人情報に縛られて病院まで行かないと病名を教えてくれないとか、自分の健康診断の画像が見られないとかいうのはおかしいと思う。個人情報を他人に知らせることは防ぎつつ、自分の情報は自由に見られるような環境を整えていけばいいと思った。