学校の先生は女王か奴隷かただの人か

あなたは学校の先生といわれて何を思い浮かべるだろうか。最近のニュースだと神戸市立の小学校の先生が同僚の先生をいじめたことが話題になっていた。子どもたちのいじめを止める立場であるはずの先生がいじめをするなんて、交通事故を減らすはずの警察が飲酒運転をして事故を起こすようなものである。

 

他に話題になっていたことといえば先生の長時間労働だ。学校にはタイムカードが存在しないとか、部活はほぼボランティアだとか、PTAや学校行事などの雑用が多いとか。しかも部活は手当は出るが労働とはみなされないので報酬はスズメの涙程度らしい。自分の学生時代を思い返すと、貴重な休日を潰して練習試合や大会にも連れて行ってくれた部活動の顧問の先生には感謝の気持ちしかない。

 

こんな悪いニュースばかりでは先生になりたいという人はどんどん減っていくのではないだろうか。実際、全学校の約7割を占める公立学校の先生を採用する試験の受験者数は平成26年から徐々に減少している。それでいて採用者数は増えているため試験の競争率は下がっているのだ。まあ受験者数が減っている原因には少子化もあるのだが、先生に関する悪いニュースも原因の一つではなかろうか。

 

先生に関する悪いニュースをよく聞くようになったのは最近だが、自分はそれを聞く前から先生になりたいと一ミリも思ったことはない。なぜなら目立ちたくないし、人の名前を覚えるのが苦手だからだ。

 

学校の先生になると、生徒やその親など知りあいがとてつもなく増える。生徒からすると一人の先生でも、先生からみると生徒一同の中の一人だ。そのため自分が相手を覚えてなくても向こうがこっちを覚えている可能性もある。まるでちょっとした有名人だ。スーパーでの買い物も安心してできない、それがなんか嫌だと思った。

 

何人もの子どもたちの顔と名前を覚えるのも難易度高すぎる。自分の受け持つクラスだけならまだいいが、場合によっては同学年の生徒全員を覚える必要がある。成人式の時に高校の同窓会に参加したら担任ではない数学の先生が自分の名前を覚えていてびっくりした。自分のほうがうろ覚えなのに。

 

しかもせっかく覚えても一年たったら別の学年のクラスを受け持つので、また違う子どもたちの顔と名前を覚え直さなければならない。それが先生を続けている限り毎年繰り返されるのだ。想像するだけでぞっとする自分には無理ゲー。

 

先生は長時間労働が問題になるくらい労働時間が長いのに、正規で先生になるのも難しい。専門学校や大学で教員免許をとっても、公立学校の先生になるには採用試験に合格する必要がある。倍率は地域によって差はあるものの3~13倍となかなかきつい。自分の周りにも先生の知りあいが何人かいたが、毎年受験し続けて数年後に合格するという人が多かった。

 

採用試験に不合格だった人が来年の試験まで何をするのかというと、多くが臨時教員として働くのだ。採用試験を受けるときに臨時採用を希望して不合格だった人は、そのほとんどが臨時教員として採用される。臨時といっても担任や部活の顧問も受け持つため正規の先生と同じ仕事をするのだが、給料は安く任期があるためいつまで働けるかはわからない。来年の採用試験も不合格ならずっとその待遇のまま働き続けることになる。

 

そもそも学校の先生になりたいと思ってない人間がこんな壁を乗り越えられるはずがない。そう思って自分は教員免許はとったものの採用試験は受けなかった。 同じ実習先に行って毎日自分より遅くまで残って授業の準備をし、一発で採用試験に合格した同級生は尊敬の目でしか見られない。

 

自分とは違って先生になりたいという人もいるのだ。先生になりたい理由は教えるのが得意、子どもが好きなど人それぞれ。恩師にお世話になったから先生になりたいという人もいる。だがわたしにはそんな先生はいない。

 

別に自分の学生時代にいい先生がいなかったわけではない。ただ自分が先生とあまり仲良くなれないタイプの人間だったからだ。目立つタイプでもなく、そこそこ真面目に勉強をやり中の上くらいの成績をとっていたため先生にとっては手がかからず印象に残らない生徒だったと思う。

 

話題にできるようなグレートティーチャーもいなければクレイジーサイコティーチャーの思い出もない。どうも自分のいた学校は平和だったようだ。自分の通っていた学校は近隣の学校と比べて落ち着いているため、他の学校で問題のあった先生が更生のために配置されるという噂があったくらい。

 

だが他のクラスから締め出されて教室に入れなくなった先生、私は絶対結婚しないと言っていたのに数年後に同僚と結婚した先生、古文の助動詞をリズムで読んで覚えさせる先生、女子に悪口をいった男子をビンタした先生、掃除をするとき姿勢がよすぎる先生など、印象に残っている先生はまあまあいる。

 

やっぱり子どもの時に親戚以外で関わる大人として先生の存在は大きい。そんな先生が自分にとっていい先生か悪い先生かというのは後になってみないとわからないこともある。女王の教室というドラマでは厳しい指導をする 阿久津真矢は嫌われていたがクラスがよくなっていったことで見直され、最後はクラス全員から感謝された。本当にいい先生がどうかはなかなかわからないものだ。

 

今は採用試験の倍率が下がったから優秀でない人も先生になれるようになってよくないという意見もきくが自分はそうは思わない。倍率が高かったらいい先生ばかりになるのなら昔の先生はいい先生ばかりでないとおかしい。しかしそうではない。成績がよくて東大に行った人がいい先生になれるとも限らない。学歴がなくても自分が苦労して勉強をしたり教えた経験がある人のほうがいい先生になれると思う。

 

などとえらそうに語ってみたが先生になる覚悟もない若輩者の戯れ言なのであまり気にしないでほしい。先生の働く環境がよくなっていい先生が増えてくれることを切に願う。