契約社員にメリットなんてない

契約社員を知っているだろうか。契約社員は保険の契約をさせる社員のことではない。期間を定められて働く社員のことだ。官公庁では臨時職員と呼ばれている。


契約社員(臨時職員)は派遣社員のように原則選考がないわけでもなく、普通に採用試験を受けて採用される必要がある。それなのに契約満了日がきて契約が更新されなければ速やかに退職しなければならず、給料は正社員より安い。


上記の簡単な説明からでも察せるだろうが、契約社員にはメリットなんてない。正確には1つもないわけではないのだが、契約社員のメリットは全て正社員にもあるものなので、契約社員にしかないメリットはない。


契約社員はフルタイムで働かされるのに待遇は悪いというまさに奴隷労働。雇う側はいつでも辞めさせられる、安く労働力を使えるとメリットだらけだが、働く側にはなんのメリットもない。


例えるなら愛人ではなく都合のいい人である。都合が悪くなればいつでも切られるという点は共通しているが、愛人はプレゼントに高い食事と付き合っている間は大切にしてもらえる。しかし都合のいい人は必要なときだけ呼び出される、食事は安いところ、と付き合っているときでさえ扱いがひどい。契約社員の待遇はそんな感じである。


本来社会にお手本を示すべきである官公庁でもたくさんの臨時職員(契約社員)を雇っている。最近は手続きをしに窓口に行くと対応してくれるのは99%の確率で臨時職員(契約社員)である。公務員はあまり仕事しないくせに給料いっぱいもらってむかつくと思うかもしれないが、窓口の人はそうではないので優しくしてあげてほしい。クレームをいうなら奥の方に偉そうに座っている係長や課長を呼び出すべき。


大手企業でも同様に契約社員を大量に雇っている。同じような仕事をしている隣の人との年収が2, 3百万違うことも珍しくない。給料だけでなく交通費や有給休暇日数などの福利厚生にも大きな差がある。天下のGoogleでさえ社員の半分以上を契約社員として雇っているなんて夢も希望もない。


契約社員のデメリットは以下のとおりである。

・退職金がない
・昇給がない
・ボーナスがない、あっても雀の涙
・有給休暇日数を正社員は30日取得できるのに、契約社員はたった10日
・官公庁で働いているのに健康保険料の安い共済組合ではなく、高い協会けんぽに加入させられる
・普通に残業させられる
・ゴミ捨てやクレーム対応など正社員がやりたくない仕事をおしつけられる
・契約を更新し続けて何十年も同じ条件で働かせさられる
・1年契約で契約満了日を3月30日、契約開始日を4月1日にされていると、3月ぶんの国民年金と健康保険料を自分で手続きして全額自己負担で支払わなければはらない
・勤め先の都合で速やかに退職させられる
・更新の可能性があるかないかが入社時に書面で明確にされず、退職時の離職票では更新の可能性なしとされている
・正社員登用をエサにこき使われる
・お茶代、募金、飲み会代など参加不参加に関係なく正社員と同額を回収される


これらが全ての契約社員にあてはまるわけではないが、契約社員をこんなふうに扱っているところがあるのは事実。月給やボーナスなどわかりやすいものだけでなく健康保険料など見えづらいものにも格差がある。


子どもが生まれたときに取得できる育休も契約社員はとりにくい。正社員であれば1年以上勤務している人なら誰でも取得することができる。しかし契約社員は「子どもが1歳6か月に達する日までに労働契約の期間が終了することが明らかでない」という条件付きである。


この条件はかなり厳しい。なぜなら契約社員の契約期間は6か月~1年ごとが多いからだ。職場に報告するのが妊娠2,3か月目なら出産するまで約7か月。それに1年と6か月を足すと2年3か月=27か月となる。6か月契約の人なら最近更新されたばかりだとしても4回更新される見込みがあるということ。あれ、無理ゲーじゃない?


法律で出産や育児を理由に契約の更新をしないことは禁止されているが、理由なんか他にいくらでも作れる。会社の経営悪化とか本人の能力不足とか仕事がなくなったとか。そもそもいつでも辞めさせられるからと雇っていた企業が契約社員に育休を取らせるとは思えない。1年ごとの更新で4年間働いていた職場に妊娠を報告すると次の契約が更新されなかった契約社員がいる。育休は取得できても戻ってきて数か月で辞めさせられた契約社員もいる。


派遣社員なら派遣先が変わっても派遣元の会社が変わらない間は労働契約の期間として認められる。そのため育休を取得できたという話を聞いたことがあるが、契約社員で育休を取った人の話は聞いたことがない。だれか契約社員で育休をとったという人がいれば教えてほしい。せっかく日本には育児・介護休業法で定められた世界トップレペルの育休があるのに、それを限られた人しか取得できないというのはとても残念だ。


近年は契約社員がどんどん増えている。その割合は25~35歳で高く、その3~4人に一人が正社員として働きたいのに契約社員として働いているという現状がある。25~35歳といえば子育てをするのに適した年代なのに、契約社員であるということで子育てをあきらめてしまっている人も多いのではないだろうか。


契約社員は給料は少ないし有給はとれないし育休もとれない。日本の少子化が進むわけである。政府は子育て支援より先に若者の就労を安定させる政策をしてほしい。契約社員という人を奴隷のように扱う悪しき雇用形態が1日も早くなくなってくれることを願う。