派遣の闇について考える

派遣というと就活で全滅した人や転職先がなかなか決まらない人が働いているイメージがある。なぜなら派遣の勤務時間はフルタイムで基本週5日以上とちょっとだけ働きたい人には向いていないからだ。


契約は3ヶ月ごとに更新され最長3年まで同じ派遣先で働けることになっている。そのため3年経ったら異なる派遣先に行かなければならないのだが、部署が変わるだけで同じ会社に勤め続けることもあるらしい。


ドラマ「ハケンの品格」では派遣はお茶くみやコピー取りなど雑用ばかりで企画はやらせてもらえないという話があった。だが担当じゃなかったら社員でも企画の仕事はできないし、もともと企画をすることが業務内容に含まれている派遣もいる。雑用ばかりというのは派遣に限ったデメリットではない。


ただ世の中には正社員というだけで派遣を下に見ているやつがいる。派遣のくせにとか、派遣は会社の一員ではないとか、派遣は責任がとれないとか。正社員は責任が重いとかいうが最悪退職すればいいだけである。しかも法律で守られているためなかなか解雇されることはない。3ヶ月でたいした理由もなく契約を切られる派遣のほうがよっぽど責任が重いと思う。


ゴミ出しは派遣の仕事と押しつけたり、雑用をこれやっといてと丸投げして感謝もしない社員の顔面にはこぶしをめり込ませたい。派遣は業務内容が決められており契約以外のことはしなくてもいいことになっている。とはいっても業務内容がざっくり決められている場合、いろんな仕事があてはまってしまう。〇〇のサポート、来客対応、社内雑務など。


ドラマでは社員食堂で派遣と社員の料金が異なるという話があった。現実でも派遣はウォーターサーバーが使えないことが話題になっている。まあそれもひどい話なのだが、一番ひどいのは福利厚生の格差である。


派遣は昇給やボーナスは基本的になしで、あっても雀の涙くらい。健康保険料は大企業ならその会社独自の保険に入れるため安い。だがたとえ大企業に派遣されても、派遣はその会社の保険には入れず協会けんぽなどで高い保険料を支払うことになる。また派遣は交通費も時給に含まれていることが多い。その場合、税金が丸ごとかかってくるので交通費を別に支給されるより手取り収入が減る。


1つの会社に縛られない派遣は気楽だというイメージがあるかもしれないが、自分は全くそう思わない。半年更新の契約社員でも契約期間満了が近づくと更新されるか不安になりストレスが半端なかったのに、派遣ではそれが3ヶ月ごとにくるのだから。


職場が変わったら人間関係がリセットされるのはいいが、新しい職場の仕事のやり方やルールを覚えるのはなかなか大変だ。3ヶ月ごとにそれを繰り返すのはしんどいので契約の更新を目指すことになるのだが、更新してもらうには新しい職場の人たちに気に入られなければならない。結果、職場で人間関係をよくするために正社員より余計に気を使わなければならない。どんなに努力したところでやる仕事がなくなれば契約を切られるという可能性もある。


契約社員にはない派遣のメリットは、契約を切られても派遣会社の担当者が新しい職場を探してきてくれることくらい。だがこれも自分の希望から外れたものばかり提案される上に働くことを急かされることもあるので、メリットとは言いきれないかもしれない。


正社員型派遣(常用型派遣)とは派遣会社の正社員となり、別の会社に派遣されること。正社員なので普通の派遣よりましだというイメージがあるかもしれないが、デメリットも多い。一定の給与が支払われる代わりにずっと働き続けることが求められる。


契約期間だけ報酬が支払われる普通の派遣と違って、正社員型派遣は常に報酬が支払われることになっている。そのため派遣会社にとって正社員型派遣が働いてない期間はタダ飯を喰わせてやっている状態になる。当然、派遣会社はそれをよしとはしないので今の派遣先の契約が終わったら一日でも早く次の派遣先で働かせようとする。だからやりたい仕事でないといっても、通勤に時間がかかりすぎるから困るといっても希望をあまり聞いてくれない。


正社員型派遣は正社員という名前であってもやっていることは派遣の仕事で、自分で派遣先を選ぶこともできないというわけだ。昇給や賞与が少ないなら給料はあまり変わらないので、派遣先を選びやすい普通の派遣として働いたほうが気楽でいいかもしれない。


など闇の面やデメリットばかり書いたが、派遣は悪いことばかりではない。派遣は残業がないことが多いし、アルバイトをするよりは時給が高いことが多い。また派遣でないとできないような仕事もある。マスコミ関係や研究職、デザイナーなど普通に就活するとかなり狭き門だが、派遣では簡単に採用されたりする。


最近は法改正によって交通費が時給とは別に払われるようになったり、某大手派遣会社では派遣社員が派遣先で直説雇用されることを目指すようになったりしている。会社の取り分を明確にして口コミで宣伝することで広告宣伝費を抑え、派遣社員の給料が多くなるようにしている派遣会社も出てきているらしい。


だんだんと派遣社員にとってよい環境が作られているのはいいことだ。自分も派遣として働くことがあるかもしれないので、一日でも早く派遣社員がもっと働きやすい世の中になることを願う。