看護師のイメージって

看護師は白衣の天使とか癒し系職業ナンバーワンとかきくとモヤっとする。なぜなら看護師は強さとたくましさを兼ね備えた選ばれし者ができる仕事だと自分は思っているからだ。


看護師の仕事はきつい、汚い、危険の3Kだと言われている。まず患者の体位変換や移乗は腰を痛める可能性のある力仕事である。入院施設のある大病院なら365日24 時間体制なので看護師は夜勤ありの2交代か3交代で働いている。またミスが患者の命に直結する仕事なのでずっと気が抜けない。だから肉体的にも精神的にもきつい。


看護師の仕事には排泄の介助がある。入院している人の中にはベッドから自力で起き上がれない人もいる。そういう人はベッド上に便器をおいて用を足したりするので、看護師は陰部とお尻をふいたり便器を片付けたりする。なかには便秘がひどい人もいる。そういう場合は肛門にぬるま湯をいれる浣腸をしたり、指をいれて掻き出す摘便をしたりする。排泄物に触れることがある、だから汚い。


病院にはいろいろな感染症にかかった人が集まり、看護師は仕事で患者に接触するため感染する可能性が高い。感染症はマスクをしていれば防げるものばかりではない。手袋やエプロンをして患者の体液に触れることないように気をつけていても破れることもあるし、針刺し事故は防げない。血液に触れてしまうとエイズやB型・C型肝炎などの重大な感染症にかかる可能性がある。だから危険。


自分の知り合いにも看護師が何人かいるのだが、仕事が大変なためかきつい性格の人がいる。一見優しい笑顔で穏やかそうに見えても芯は強い看護師が多い気がする。


実習のときに目撃した看護師は歩くのがめちゃくちゃ早い。時間に追われることが多いためか話すときもそれで?次は?と急かされている感じ。ミスをした時に怒鳴られはしなかったがなぜそうなったの?予習してなかったの?と淡々と責められる感じがきつかった。まあ全ての看護師にあてはまるわけではないが。


看護師のイメージにはナイチンゲールも関係している。近代看護の祖と言われているナイチンゲールは、クリミア戦争で敵・味方の分け隔てなく負傷兵たちを看護したためクリミアの天使と呼ばれている。ナイチンゲールのやったことで広く知られているのがこれで、ランプを持って夜回りする絵が有名なので、献身的に尽くした人というイメージが強い。


しかしそれは彼女のしたことのたった一部である。ナイチンゲールは数多くの著書を残しており、現場で看護師としてというよりは統計学者や病院長、教育者として働いたことのほうが多かった。看護とは生活を整えて患者の自然治癒力の発動を助けることだと定義したのがナイチンゲールである。彼女は負傷兵の死亡原因が病院の衛生管理にあることを明らかにし、そのことを国会議員に理解してもらって病院の環境を改善し、負傷兵の死亡率を劇的に引き下げたすごい人である。


医療ドラマでは看護師が医師の助手であるかのように描かれることが多いが、看護師の本来の仕事は患者が日常生活をおくれるように支援することである。医師の仕事は病気や怪我を治療すること。その治療をサポートするのも看護師の仕事の一つなので間違ってはいないのだが、そこばかりクローズアップされるのは違和感がある。


看護師は医師がいないと医療行為ができないというのもイメージに関係している気がする。ドラマの看護師は先生!といつも医師に確認しているが、それは法律で決められているから。看護師は医師の指示のもとでしか医療行為を行えないとされている。ベテラン看護師なら医師よりも知識が豊富な人も多く自分で判断できないことはないのだが、医師の指示がないと法律違反になるためそうしているだけなのである。


そんな看護師は職に困ることもない。コード・ブルーの冴島看護師が「クビにしたければいつでもどうぞ、看護師は引く手あまただから全然困りませんが」と言っていたがまさにその通りである。看護学科では看護師になる人は就職率100%だと言っていたし、過疎地域でも診療所のあるところなら仕事がある。全国どこでも働けてクビになってもすぐ次を見つけられるというのは強い。


このように見ていくと看護師は白衣の天使というイメージからはズレがある。看護師が主人公のドラマのタイトルになっていた白衣の戦士のほうがイメージに合っている気がする。自分が看護師をするのはめちゃくちゃ厳しいと思うので、看護師として働いている人たちを尊敬している。