「エクソシスト」を自分なりに解釈する

映画「エクソシスト」は神父が悪魔祓いをして悪魔に取り憑かれた少女を助ける話である。自分は子どもの時にテレビで見たことがあるのだが、少女のお腹にHelp meの文字があったことと神父が悪魔を自分に乗り移らせて窓から飛び出したこと以外記憶になかったので、DVDを借りて久しぶりに見てみた。


主な登場人物は3人。
リーガン→悪魔に取り憑かれた少女
カラス神父→神父でありながら精神科医で体も鍛えているハイスペック
メリン神父→悪魔祓いの経験あり、信仰心が強いが高齢で心臓の持病あり


子どものときは悪魔に取り憑かれた少女が怖いというイメージが強かったが、今になってみると気になることが多すぎて怖さはほとんど感じなかった。気になることは以下のとおりだ。


・リーガンは本当に精神的な病ではなかったのか
・なぜ悪魔はリーガンにとりついたのか
・監督はなぜリーガンの部屋に行ったのか
・メリン神父はどのようにして亡くなったのか
・カラス神父に悪魔が乗り移ったのはなぜか


2時間ちょっとある話のなかで多くを占めるのが、リーガンの治療法を探し求める場面である。最初は普通の病院でストレスから神経に異常が出ているといわれる。安定剤を飲んで様子を見ていたが悪化したため、側頭葉の障害を疑い脳の検査をする。しかし異常は見つからずさらに悪化したため精神科医に家にきてもらうが、リーガンが暴れて手をつけられない。そしてもう治療法がなくなり医師から悪魔祓いをすすめられたリーガンの母はカラス神父に助けを求めるという流れだ。


リーガンが精神的な病ではないというのは、物語では証明されていない。精神疾患には検査をして異常が見つからなくても症状だけで診断されるものもある。リーガンの脳の検査に異常がないからといって精神病ではないとはいえない。だが病気では説明できないこともおこっている。


・ベッドが激しく揺れる
・首が360度回る
・逆再生したら英語に聞こえる言葉を話す
・緑色のゲロを吐く
・知らないはずのことを知っている
・棚や引き出しを動かす
・体が中に浮く


火事場の馬鹿力という言葉があるように、人間は危機的状況に陥ると普段以上の力を出すことがある。ブリッジで階段を降りるのは難しいことだがその力を発揮すればできないこともないだろう。だがそれでも首が1回転したり空中浮遊するとは考えにくい。


カラス神父は聖水だと言ってリーガンに水道水をふりかけると苦しんだため本物の悪魔ではないのではと疑っていた。しかしリーガンが知らないはずのカラス神父の母の死やメリン神父の名前を知っており、精神的な病では説明できないことが多いため悪魔祓いの適応であると判断する。


自分もリーガンは悪魔に取り憑かれていたと思う。だがなぜ悪魔はリーガンを選んだのだろうか。考えられる理由は2つある。1つ目は両親の離婚で精神的に弱っていてつけこみやすかったから。2つ目はウィジャヤボードを使って架空の人物と対話するなど霊的な素質があったから。ちなみにメリン神父は悪魔が私たちを絶望させるためだと言っていた。


リーガンの変化が大きくなったことのきっかけに母の知りあいの監督の死がある。監督はリーガンの家の前の階段の下で死んでいた。リーガンは母との会話で監督を殺したことを匂わせている。カラス神父がリーガンの部屋の窓から飛び出した時に階段を転がり落ちたことからも、監督が亡くなる前にリーガンの部屋にいたことは明らかだ。だがそのことを母親は知らないようだった。


監督は亡くなる前の日にリーガンの家のホームパーティーに来ていた。寝ていたリーガンが監督を部屋に呼ぶ理由はないので、監督が母親に気づかれないようにひっそりとリーガンの部屋に行ったことになる。そして監督がリーガンに何かして殺されたと想像できる。監督がなぜリーガンの部屋に行ったのか物語内では描かれてないが、監督の死後リーガンが卑猥な言葉を言ったり男性に対してより攻撃的になったことから、性的虐待をしようとしたのではないかと思う。


リーガンは両親が離婚して母親が父親を電話で激しく責め立てているのを聞いていたので、もともと男性への印象が悪かった。それに監督のこともあってさらに男性に対する敵意が強まったのではないだろうか。リーガンが大怪我させたり殺したりしたのは男性だけで一番近くにいる母親は無事だったし、男性であるメリン神父とカラス神父が悪魔祓いをしているときの抵抗もすごかった。


そんなリーガンを本気で助けようとしていたメリン神父は悪魔祓いの途中でリーガンと二人きりの時に亡くなってしまった。なぜ死んだか描写はされてないがメリン神父はリーガンを救うために無理をしていたので、それがたたって持病の心臓病で亡くなってしまったのだと思う。なぜならメリン神父の死体は傷がなくきれいだったからだ。


カラス神父はメリン神父が亡くなったことで怒ってリーガンにつかみかかり、悪魔に自分に乗り移るように言う。そしてカラス神父は悪魔が取り憑くやいなや窓から飛び降りたため、リーガンは悪魔から解放されて日常に戻ることができた。


悪魔がカラス神父に乗り移った理由にはリーガンの体が弱っていたこともあると思うが、カラス神父の思いの強さもあったと思う。カラス神父は弱って精神病棟に入れられた母親を看取ることができなかったことを気に病んでいた。その罪悪感もあってリーガンを救うために一生懸命だった。


カラス神父は神に祈っても人間を救うことはできないと思っていたが、リーガンに取り憑いた悪魔を倒すときは神に祈りリーガンを助けられると信じていた。その思いの強さが悪である悪魔に勝ち、善であるリーガンを救ったのだと解釈している。カラス神父は亡くなっても彼の魂はみんなの中で生き続けるという考えはすてきだと思う。